2024年ドラフト指名を待つ男たち 最速159キロの「強いストレート」工藤泰成【崖っぷちリーガー】
消滅寸前の弱小球団が11年連続ドラフト指名選手を輩出するチームへと遂げた徳島インディゴソックスを追った『崖っぷちリーガー 徳島インディゴソックス、はぐれ者たちの再起』(高田博史 著、菊地高弘 編集)が10月21日に発売される。ドラフト会議が迫るこのタイミングで、「終章 渇望 2024年ドラフト指名を待つ男たち」から一部抜粋で公開する。徳島インディゴソックスから12年連続ドラフト指名選手を輩出することになるか! (文:高田博史)
●「何キロ出てます? いま、159キロ出たんですけど」 マジック「3」を一気に消化して後期優勝を達成したときも、圧倒的な成績で公式戦全68試合を戦い終えたときも、徳島の選手たちの表情には、どこか冷静さのようなものが残っていた。 優勝した喜びも、やり遂げた達成感も、もちろんある。だが、まだ何も終わっていないことを誰もが理解している。 2024年9月17日、高知対徳島後期10回戦(高知球場)に徳島は4対1で勝利し、リーグ戦の全日程を終えた。 最終成績は34試合24勝6敗4分け、勝率.800は優勝球団の勝率として過去最高の数字である。 徳島が後期優勝を決めた9月4日、先発は工藤泰成(東京国際大)だった。 ネット裏にはパッと見ただけでNPB 3球団のスカウトが視察に訪れている。それぞれがスピードガンを向けているなかで、スカウトの1人が「ウソだろ……?」と言った表情で、ほかのスカウトのほうを振り返った。 「何キロ出てます? いま、159キロ出たんですけど」 「159キロ出てるよ」 「ホントですか! さっき、160キロ出たんですよ。合ってるのかなあ?」 150キロ台後半を計測する「強いストレート」が最大の武器だ。東京国際大を卒業して、NPB入りを目標に徳島に入団した。 「インディゴに来たときは、自分が一番速いと思ってました。そしたら、みんな速かった。天狗になってたわけじゃないですけど、鼻を折られるっていうか。こんな人たちがいたんだって……」 与四球率が4.90と高く、1試合で投げる球数も多い。しかし「球速」という一芸を持っていることは大きな武器になる。
ベースボールチャンネル編集部