「今年ダメだったらクビだと思う」ソフトバンク仲田慶介が語る「育成と支配下のリアル格差」
小久保裕紀監督からは、「どこに行けと言われても、守れるようにしてほしい」とリクエストされている。昨季は二軍監督として仲田を重用してきた指揮官だけに、その高い期待はひしひしと感じている。 「まずは守備。あと野手はやっぱり打てないといけないので、少ないチャンスでも結果を残せるように。とくに出塁率は自分に求められていると思うので、こだわっていきたいです。あとはバントや作戦系をしっかりと確実に決める。そういった部分で信頼してもらえれば、支配下に近づいていくんじゃないかと思います」 プロ3年目にして初めて、春季キャンプをA組で過ごした。A組は宿泊するホテルが豪華という噂を聞いたため確認してみると、仲田は「B組もいい宿舎だったんですけど」と前置きしてこう答えた。 「食事がすごく豪華で、めちゃくちゃおいしいです。外食したいとも思わないですね。バイキング形式でおかずの種類が多くて、寿司や刺身なんか毎回ありますし。チームに届いた差し入れも出してくださっていて、とにかくすごいです」 B組にいた昨年より、ファンから受ける声援も熱を帯びている。仲田は「ワンプレーへの反応が全然違うので、しっかりといいプレーをして声援をもらえるようにしたい」と気を引き締める。 その一方で、「あくまでも自分はまだ育成選手だ」と危機感を持ち続けている。 「今年ダメだったらクビと思っています。野球人生をかける覚悟でやっています」 インタビューを終えた翌日以降、仲田は紅白戦で2日連続マルチ安打を放つなど順調にアピールを続けた。オープン戦では6試合で5打数0安打と苦しんでいるものの、首脳陣から求められている守備面ではしっかりと貢献している。 背番号155の数字が軽くなる日もそう遠くはないだろう。だが、仲田の下剋上はここがゴールではない。 努力に努力を重ねた不屈の男が輝くのは、最高峰の舞台こそふさわしいはずだ。
菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro