新興EVメーカーBYDの日本での販売台数はアルファロメオと同等! ブランド力よりも「商品力」が問われるEV独特の市場
新興ブランドにしては頑張っている!?
二酸化炭素の排出量が少ない環境性能に優れたクルマとして電気自動車が注目されている。そのなかで話題になることの多いブランドが中国のBYDだ。1995年にバッテリーメーカーとして創業した新興ブランドで、自動車の製造は2000年以降に開始した。その売れ行きが好調だと話題になることが多い。 【画像】BYDのフラッグシップセダン「シール」の画像を見る(79枚) 日本におけるBYDは、まず2023年1月にATTO 3を発売した。続いて同年9月にドルフィン、2024年6月にシールを発売している。従って2023年に販売した車種は大半がATTO 3だったが、少数のバスも含めてBYDは1511台を登録している。1カ月平均は126台で、アルファロメオに近い販売実績だった。 2024年1~5月は、ドルフィンも加わり累計は935台で、1カ月平均登録台数も187台に増えた。そこでATTO 3とドルフィンでは、どちらが多く売られているのかを販売店に尋ねた。 「ATTO 3の価格は450万円です。1回の充電でほぼ同じ距離を走るドルフィン・ロングレンジの407万円よりも高いですが、人気はATTO 3が勝っています。ATTO 3はミドルサイズですから、全長を4300mm以下に抑えたコンパクトなドルフィンよりも車内が広く、ファミリーカーとしても使いやすいです。ガラスルーフが開閉式になるなど、装備も充実しています。そのために価格はドルフィン・ロングレンジに比べて約40万円高いですが、ATTO 3が人気です」
納期はどうなのか。
「中国で生産することもあり、欧州製の輸入車に比べて短いです。在庫がない場合でも、3カ月以内に納車できます。購入のしやすさもメリットです」 ATTO 3の価格は、国産の電気自動車と比べても割安に受け取られる。ATTO 3のボディサイズは、全長が4455mm、全幅は1875mmとワイドで、駆動用電池の総電力量は58.56kWhだ。1回の充電で470kmを走行できる。装備も充実しており、衝突被害軽減ブレーキ、運転支援機能、後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットインフォメーション、パノラマサンルーフなどを標準装着した。 この内容を日産リーフに当てはめると、60kWhの駆動用電池を搭載して、1回の充電により450kmを走行できるe+X(価格は525万3600円)に近い。リーフe+Xに、運転支援機能のプロパイロット、インテリジェントアラウンドビューモニターなどのセットオプションを加えて、ATTO 3と装備水準を合わせると、合計価格は538万5000円だ。ATTO 3の価格は前述の450万円だから、同等の内容を備えたリーフに比べて100万円近く安い。この価格差がATTO 3のもっとも大きな魅力だ。 また、電気自動車は、テスラの高人気からもわかるとおり、従来からのブランド力をあまり問われない。新興メーカーとしての不利が販売面に悪影響を与えにくく、BYDの売れ行きも堅調だ。 ただし、現時点でBYDのビジネスが軌道に乗ったわけではない。2024年1~5月の1カ月平均登録台数は、BYDブランド全体で187台だから、リーフの半分以下だ。急速に売れ行きを増やすことは狙わず、販売網の整備を進めながら、少しずつ着実に普及を進める必要がある。
渡辺陽一郎