【カンヌ国際映画祭 2024】パルムドールの主要候補から「沈黙」ジェスチャーの意味まで中間レポート!
奥山監督『ぼくのお日さま』の反響
日本作品がパルムドール候補にない今年、最も注目を集めているのは「ある視点」部門に出品された奥山大史監督の『ぼくのお日さま』といっていいだろう。 現在28歳の奥山監督は、22歳のときに第66回サンセバスチャン国際映画祭で最優秀新人監督賞を受賞。長編2作目となる本作の公式上映には、「ある視点」部門の審査員長グザヴィエ・ドラン監督はもちろんのこと、是枝裕和監督や西川美和監督、『CLOSE/クロース』のルーカス・ドン監督など錚々たる顔ぶれが駆け付けた。 奥山監督が撮影、脚本、編集を担当。田舎町のスケートリンクを舞台に、アイスホッケーが苦手な少年タクヤ(越山敬達)と、選手の夢を諦めたスケートのコーチ荒川(池松壮亮)、コーチに憧れるスケート少女さくら(中西希亜良)の3人の視点で紡がれ、雪が降りはじめてとけるまでの、淡くて切ない恋の物語を描く。 上映後は5分以上スタンディングオベーションが続いた。
奥山監督と、キャストの池松壮亮、越山敬達、中西希亜良はレッドカーペットでもでひときわフレッシュな存在感を放っていた。 紅一点でレッドカーペットを歩いた中西希亜良は、フランス語も英語も堪能な12歳。劇場では来場者にフランス語で挨拶し、会場を温かいムードに包んだ。セリーヌのミニ丈ドレスも自然に着こなすさまは見事。
スタジオジブリに名誉パルムドール
20日にはスタジオジブリへ「名誉パルムドール」授賞式が行われた。「40年にわたりアニメーション映画に新しい風を吹き込んだ」と称えられたことをうけて、授賞式に登壇した宮崎吾朗監督は「これからの40年も頑張れというメッセージだと思う」と語った。 写真:宮﨑駿監督の長男でスタジオを代表して訪れた宮崎吾朗監督と依田謙一スタジオジブリ取締役。
「沈黙」のジェスチャーが意味するもの
映画祭の前半を振り返ると、今年の映画祭を象徴するシーンも見られた。 フランスでは今年に入り、俳優で映画監督のジュディット・ゴドレーシュがフランス映画界の重鎮ジャック・ドワイヨンとブノワ・ジャコから14歳で性的暴行を受けたと告発。彼女は2月のセザール賞授賞式に登壇し、「ここまで30年間“沈黙”を原動力に生きてきた。世界は私たちを見ている。勇気をもって、声を上げよう」と自作の詩をスピーチし、フランスでの#MeTooムーブメントの火付け役に。 そして彼女のところに集まってきた、自分と同じような性被害の経験がある人々の物語をもとに、『Moi aussi(仏語でMe too)』という短編を監督として紡ぎ、今回カンヌで特別上映した。 レッドカーペットでは、ジュディット・ゴドレーシュたちが口に手を当て、性被害者が強いられる“沈黙”をジャスチャーで表現する一幕も。 写真:『マッドマックス:フュリオサ』のレッドカーペットに現れた『Moi aussi』のキャストたち。