料理人であり職人。本気のシェフが作る、情熱の詰まったパスタが忘れられない
「日々食材の状態は変化します。その状態に合う調理、味付けをどうするか。常連の方の予約があれば、前とは違う料理を食べてもらいたい。ではどんなものがいいだろうと考えていると、店が閉まっても一日が終わらないんです」と、常に手がける料理のこと、食べ手のことを考えている秋野シェフ。心のこもった料理の数々に、最初は様子見だった近隣の方も今ではすっかりファンになり、足繁く通ってくれているのだとか。
鍋をいくつも使った調理も明確な意図があってのこと。手間を厭わない彼が最終的にまとめあげる料理たちは、既視感ある見た目であっても、一口食べて「わぁ」とため息が溢れる味わいだ。
武智さん「「なぜそうするのですか?」。調理するシーンを拝見しながら多くのシェフにその質問をしてきました。もちろん皆さん、その理由を教えてくれます。が、秋野シェフほど、これは○○のため、それは○○のため。そうすると合わせた時の味わいが○○になるんです、と順序立ててかなり細部に渡って答えてくれる方はいなかったかもしれません。経験則といえばそれまでですが、その答えに至るまでにどれくらいのアイデア、試作、失敗があったのだろうと思うと、「これおいしい」だけの言葉ではダメなんでしょう。でも、シェフの料理を食べて出てくるのは、ただただ「うめぇ」なんですよね(笑)。」
それぞれの個性が光る、こだわりの自家製のパスタ
乾麺も使用するが、具材やソースの味との相性や目指す味で手打ちのパスタと使い分ける。
加えて「特にロングパスタの場合は、手打ち麺という印象が残るように、見た目、食感、味わいを考えながら打っています」とのこと。メインはもちろんだが、このパスタにも秋野シェフの哲学が凝縮されている。
武智さん「ソースと絡まりつつもツルリとした喉越しの良い乾麺もおいしいです。しかし、ソースとの相性をさらに高めた印象深い一皿を目指す秋野シェフのパスタは必食の価値ありです。」
具材の個性を生かす。作業の一つひとつが味わいを生む
パスタは具材やソースによって量が変わるが、多くは80gで仕上げている。時間が経っても味わいが損なわれないように、塩は控えめに仕上げる。歓談のための食事の場という利用のされ方も考えてのことだ。