逆転有罪は避けたい…裁判官の独立は“幻想”か 半世紀にわたり袴田巖さんを獄中につないできたもの【現場から、】
静岡放送
いわゆる「袴田事件」に携わった元裁判官・熊本典道さん(2020年死去)。引退後、袴田巖さん(88)について「無罪だと思った」と打ち明けています。2024年6月で発生から58年となる「袴田事件」。実際に関わった裁判官が無罪の可能性を感じながら、半世紀近くも袴田さんを獄中につないできたものとはなんだったのでしょうか。 【写真を見る】逆転有罪は避けたい…裁判官の独立は“幻想”か 半世紀にわたり袴田巖さんを獄中につないできたもの【現場から、】 いまから58年前、1966年6月に静岡県旧清水市(現静岡市清水区)で発生した強盗殺人事件で死刑が確定したものの、裁判のやり直しが認められた袴田巖さん。判決は2024年9月26日に予定されています。 <袴田さんの姉・ひで子さん(91)> 「裁判だからどうなるか。それでも死刑にはしないでしょう」 過去の事例から袴田さんにも、無罪判決が下される公算が大きいとみられています。 <元静岡地方裁判所裁判官 熊本典道さん> 「こんな所で私の声を聞いてもらえるとは思えなかった」 58年にわたる袴田さんの裁判の“歴史”の中で、おそらく“最初”に「無罪」を唱えた裁判官・熊本典道さんです。1968年、一審・静岡地裁の3人の裁判官の一人だった熊本さんは、死刑判決からおよそ40年後、「自分は無罪を支持した」と告白します。 <元静岡地方裁判所裁判官 熊本典道さん> 「『あれは絶対、ぼくはこう(無罪だと)思いますよ』と(裁判長に)かなり説得を試みました。だけど、最後結論として、裁判長が無罪に踏み切れなかったんですよね」 さらに、1980年代に袴田さんの再審請求の審理に裁判官として携わった熊田俊博さんも。 <元静岡地方裁判所裁判官 熊田俊博さん> 「みそ樽の中から、血染めの着衣が発見されたと。しかも発見された時期が袴田氏が拘留されてから1年も経った後に出てきて、これが有罪の大きな決め手となっていた。そのあたりがなんかおかしいなという感じがしました」 日本の刑事事件において、検察が起訴しながら、裁判所が無罪判決を下す確率は、0.1%です。他の先進国と比べると、日本では裁判所が無罪判決を下すことが少ないとわかります。 過去30件以上の無罪判決を確定させ、映画やドラマのモデルにもなった元裁判官の木谷明さんに聞きました。なぜ、日本では無罪判決が少ないのでしょうか。