「親に何と言おう」避妊に失敗 アフターピル扱う医療機関はどこ? スマホで探しても見つからない、大学生が直面した入手しづらさ
望まない妊娠を防ぐため性交後に服用する緊急避妊薬(アフターピル)の医師の処方箋なしでの試験販売が始まって1カ月半。販売する薬局が限られたり、未成年者は保護者らの同伴が求められたりと「ハードルが高い」との声が上がる。長野県内の大学3年の女性(21)は取材に、処方できる医療機関を探すのに苦慮し、不安に駆られた経験から「もっと入手しやすい態勢を整えてほしい」と訴えている。 【地図】緊急避妊薬を試験販売する薬局の位置。1自治体に偏在している都道府県が多い
■お盆休み前、避妊に失敗「早く探さなきゃ」
「気が付いたら相手のコンドームが外れていて…」。女性は大学2年の夏休みに交際相手と性行為をした際、避妊に失敗した。すぐに相手と一緒にスマートフォンで緊急避妊薬を扱う医療機関を探した。お盆休みが迫っており「早く探さなきゃ」と焦った。
産婦人科を受診したことはなく「緊急避妊薬 長野」と入力して検索。オンラインで診療できる医療機関も探したが、どこでやっているのか、薬をどう受け取るのかよく分からなかった。自宅近くのクリニックに電話すると2時間後に1枠だけ空いていた。交際相手の車で駆け込んだ。
薬は処方してもらったものの、服用後に注意すべき点を詳しく説明されることはなかった。すぐに車内で服用したが、「もし妊娠してしまったら…」「親に何と言おう」「大学はどうしよう」と不安な日々が続いた。数日後に生理が来て胸をなで下ろした。
親にも友人にも相談できず、頼りは交際相手だけ。「避妊や緊急避妊薬の知識は女性だけの問題じゃない」と実感した一方、「自分の体のことは自分で決めなければいけない」とも感じた。
女性は今回の試験販売について「今より入手しやすくなるための大切な一歩」と思う。ただ、未成年者は保護者らの同伴が条件となっており、利用者が増えるか疑問を感じる。「試験販売のことを知らない人も多いと思う」と周知についても課題とした。
■長野県内で購入できる薬局は松本市内の3カ所のみ
処方箋なしで緊急避妊薬を購入できることについては、望まない妊娠を防ぐ観点から理解が広がってきた。ただ、薬局販売を求める市民団体などは今回の試験販売では購入できる薬局が少なく、地域も偏っていると指摘。より公平、迅速に入手できる環境の整備を求めている。