高校まで絶対スマホを持たせなかった…わが子が欲しがるものを与えてきた早実初等部校長が譲らない唯一の事
■■早稲田実業学校初等部校長 星直樹先生 欲しがるものを! その子の世界観を深めます 子供は2人。上が社会人1年目の息子、下は大学4年生の娘です。 息子へのプレゼントで、よく覚えているのが自転車、いわゆるロードバイクですね。中学校1年生の頃だったかな。私も趣味程度に乗っていたので、一緒に店に行って選びました。それからは、息子はどこに行くにも自転車。電車で行く距離でも自転車で乗り付けるから、みんなから「星くんは、いつも自転車だね」って言われていたみたいです(笑)。私ともよく一緒に出かけました。富士山の周りのサイクリングコースも2人で走りました。 娘にも同じように自転車を買いましたが、そちらは全くヒットしませんでした。娘が欲しがったのは、ぬいぐるみ。ディズニーのキャラクターや動物など、そういうものを贈ると、すごく喜びました。 基本的には、本人が欲しがるものを与えていました。ただし、いくら欲しがってもスマートフォンは、高校を卒業するまでは与えませんでした。2人ともスマホを持ったのは、大学生になってから。友達や部活動での連絡など、ものすごく苦労したようですが、絶対にスマホを持たせない。それは、わが家の教育方針でした。 夫婦で話していたのは「子供ならではの世界、子供らしい生活を大切にしよう」ということでした。昔は「大人は大人」「子供は子供」、それぞれの世界があって、それぞれの生活がありました。でも今は、大人も漫画を読むし、SNSは子供も使える。特にスマホの登場によって、その境目がなくなってしまいがちです。だからこそ子供の育つ環境は、親が意識して整えようと思ったのです。 子供の世界は、「具体物に触って」なんぼです。昆虫や植物、川の水や畑の土……、実際に触ることで感じることから、子供は多くのことを学び成長していくのです。そこをスルーしてスマホの画面で満足してしまうと、子供時代にしか感じられないもの、子供だからこそ引っかかることがなくなって、一足飛びに大人になってしまう。非常に残念なことです。デジタルや仮想空間の世界に行くのは、具体物に触った後でいいのです。