全国初「半導体情報科」、民間と連携し独自カリキュラム作成 熊本・水俣高に25年度開設
水俣高(熊本県水俣市)は、全国初となる半導体関連の学科「半導体情報科」を2025年度に開設するため、市内に研修施設を持つアスカインデックス(東京)と連携し、独自のカリキュラムを作成した。同社の技術者が3年間で130時間の授業を受け持つのが特徴で、電子回路の設計・製造といった体験型学習も盛り込む。半導体関連の資格取得も促し、生産現場で即戦力となる人材育成を目指す。 学科新設は、「水俣を半導体人材育成の拠点に」との地元の要望を受け、熊本県教委が5月に決定。水俣高は昨年11月、人材育成や地域振興に向けた連携協定を水俣市とともに結んだアスカ社と協議を重ね、カリキュラムを練ってきた。 同高によると、現在の電気建築システム科(電気コース、建築コース)を、半導体情報科と建築科に改編。定員はいずれも20人で、半導体情報科は学校独自の科目「半導体技術」を新たに設定する。3年間の175時間で、電気、電子、機械、情報の4分野を横断的に学び、半導体製造工程の基礎を理解する。
学校から約2キロに立地するアスカ社の研修施設では、クリーンルームでの作業や製造装置の分解・組立などを体験する。オペレーターや生産技術職など現場で活躍する人材育成を視野に、半導体技術者検定「エレクトロニクス」4級と3級、機械保全技能士3級の取得も目指す。 「若い世代に学ぶ機会を平等に提供したい」との理念から、無償で講師を派遣するアスカ社は「初の取り組みで難しさもあるが、人材の裾野を広げ、半導体関連産業で就職、進学できる仕組みを作っていきたい」と話す。同高の新生史子副校長は「民間企業がカリキュラム作成から関わり、継続的に講師を務めていただく。他の学校にない魅力だ」と強調する。 「生徒が学校に収まることなく、地域や社会とつながる学びが必要」と高木泰典校長。建築科でも、デジタル技術を取り入れた建設デジタルトランスフォーメーション(DX)学習を、産学官連携で提供する。実習では、測量にドローンを活用し、取得データに基づき3次元ソフトを操作する。公共工事を発注する行政、受注側の民間企業で進むDXの現場を、より実践的に学ぶのが特徴だ。