4000人の研究者を抱えるロレアルリサーチ&イノベーション トップが語るヒット商品の生み出し方と化粧品業界トレンド
世界最大の化粧品企業であるロレアルグループ(L’OREAL GROUP以下、ロレアル)の研究開発部門のロレアル リサーチ&イノベーション(L’OREAL RESEARCH & INNOVATION以下、ロレアルR&I)は、日本を含む世界各地の拠点で4000人以上の研究員が日々研究開発に取り組んでいる。ロレアルの戦略の根幹を成す組織の仕組みや裏側、化粧品業界の展望について、「イノベーション&製品開発」部門を指揮するステファン・オルティス(Stephane Ortiz)=ロレアル リサーチ&イノベーション イノベーション&製品開発ディレクターに聞いた。 【画像】4000人の研究者を抱えるロレアルリサーチ&イノベーション トップが語るヒット商品の生み出し方と化粧品業界トレンド
科学、消費者、従業員
3つの多様性を重視
WWD:ロレアルはリサーチ&イノベーションを戦略の根幹に掲げるがその背景は?
ステファン・オルティス=ロレアル リサーチ&イノベーション イノベーション&製品開発ディレクター(以下、オルティス):100年以上前にさかのぼると、ロレアルは1人の化学者ウージェンヌ・シュエレール(Eugene Schueller)により誕生した企業だ。そのため、ロレアルの中核には常に科学がある。ロレアルR&Iは世界でも最先端と言える研究機関で、2022年は約10億ユーロ(約1630億円)を投じ研究を進めている。4000人の研究者が有する専門知識や、科学的な特許などのリソースがわれわれの貴重な財産となっており、競合他社との競争優位性にもなっている。
WWD:どのような専門分野を持つ研究員で構成されているか。
オルティス:ロレアルR&Iでは3つの多様性を重視している。1つ目は科学の多様性。科学の領域の中で50以上もの分野を対象に研究を行っている。2つ目は消費者の多様性。R&Iのハブは世界中に7拠点ある。日本、中国、インド、南アフリカ、フランス、ブラジル、米国の7カ所にあることで、それぞれのエリアのお客さまと非常に近距離でコミュニケーションができる。美に関する課題や悩み、何を感じているか、親近感を持って当事者として関わることでニーズを満たすことができている。例えばブラジルの消費者は、髪の毛に強いこだわりがあり専門知識もあるため髪に対する要望のレベルが非常に高い。一方で、米国はメイクアップに対する意識が高い。日本のお客さまはスキンケアのリテラシーが高く、こだわりが強いことが分かっている。3つ目は従業員の多様性。ロレアルR&Iではグローバルで66、日本では19の異なる国籍を持つ従業員がいる。その理由は、多様なアプローチ、戦略を取ることにより、さまざまな機会を間違いなく捉えられるからだ。