4000人の研究者を抱えるロレアルリサーチ&イノベーション トップが語るヒット商品の生み出し方と化粧品業界トレンド
スピード感を生む開発フローと
優れた消費者理解が強み
WWD : 大きな組織でありながら、スピード感のある意思決定や商品開発ができる理由は?
オルティス:ロレアルR&Iには非常にこだわりを持った、ほかとは違う開発フローがある。1つは消費者インサイトに基づいて研究開発を行っている点、もう1つの特徴がアップストリーム(消費者側から開発側)からダウンストリーム(開発側から消費者側)への流れで開発を行っている点だ。最終目的は、全てのお客さまの要望に沿った高性能な商品開発だ。R&Iだけでなく、マーケティングやオペレーションチームと協働しながら、毎年1000以上の新商品を生み出している。スピード感のある開発が可能なのは、人材の力が大きいが、われわれが蓄積してきたデジタル力とデータも大きく貢献している。
さらに、R&I内は大きく3つの部署がありそれぞれが密に連携する。1つ目は「イノベーション・ディレクション」と呼ぶチームで、消費者のニーズや最新トレンド、消費者のインサイトを理解することに主眼を置く。人材はマーケティングのバックグラウンドを持つ人が集まっており、消費者をきちんと理解するために情報収集を行う。彼らは特定のブランドに所属せず、全てのブランドに対して貢献すべく活動する。そして2つ目が「アドバンスト・リサーチ」と呼ぶ先進科学のチームだ。このチームには肌や髪に対して科学的な知見が多くあり、新しい分子や有用成分を開発・発見している。過去にはエイジングケア成分のプロキシレンや、最近では「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」のUVミューン400などを開発した。
3つ目は「オープン・イノベーション」チームといい、科学とテックの分野で常に最前線を走るためにスタートアップやさまざまな研究機関と連携を取り、将来の美の創造のためのエコシステム構築を進めている。これら以外にも、「エバリュエーション・インテリジェンス」チームが、毎年1万7000以上もの商品が市場に出て認知される前に、評価を確認する作業を進めている。そのほか、薬機法などの規制や商品の安全性、法遵守などを確認するチームもある。