学校統廃合を促す?「文科省手引」の本当の評価
歳出削減の圧力を「地方創生」が押し戻す
今回の手引策定に、歳出削減を求める財務当局の意向が反映していた側面は否定できません。 公立小・中学校のほとんどは市区町村が設置していますが、人件費である教職員給与は都道府県が3分の2、国が3分の1を負担しています。学校統廃合は、市区町村よりも国などにメリットがあります。財務省主計局が昨年10月、財政制度等審議会の財政制度分科会に提出した資料によると、標準規模を下回る学校を機械的に解消すれば全国で5400校余りが減ることになり、教職員数は小学校だけでも約1万8000人を削減できると試算。統合困難な地域には個別に配慮が必要だとしながらも、積極的に統廃合に取り組む必要性を訴えていました。 一方、そうした流れを押しとどめたのが、第3次安倍内閣が掲げる「地方創生」でした。昨年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、「地域コミュニティの核としての学校の役割を重視しつつ、活力ある学校づくりを実現できるよう」、学校統合を検討する場合だけでなく小規模校の存続を選択する場合にも、市町村の主体的な検討や取り組みを「きめ細やかに支援する」としました。文科省の手引でも「それぞれの地域の実情に応じた最適な学校教育の在り方や学校規模を主体的に検討することが求められています」「まちづくりの在り方と密接不可分」「『地域とともにある学校づくり』の視点を踏まえた丁寧な議論を行うことが望まれます」としています。 (渡辺敦司/教育ジャーナリスト)