【高校バスケ】今年は今年、私は私──京都精華学園・林咲良【ウインターカップ】
京都精華学園の中心にいた、必要不可欠な司令塔
「はぁ~、疲れたぁ~!」 「SoftBank ウインターカップ2024令和6年度 第77回全国高等学校選手権大会」の女子決勝戦を制し、表彰式、取材対応を終えて記者会見場を後にする瞬間、京都精華学園の#4 林咲良は満面の笑みでこうつぶやいた。 重圧から解放され、自然とこぼれた言葉だった。 慶誠との決勝戦は、多くの時間帯で京都精華がリードしていたものの常に接戦。4Q残り50秒には慶誠#17 澤田樹奈が3Pシュートを射抜き、56-54の2点差。最後は#17 坂口美果の3Pが決まって59-54で逃げ切ったが、最後まで気の抜けない試合だった。 堀内桜花(シャンソン化粧品)という偉大な先輩から先発ポイントガード、そしてキャプテンという立場を引き継いだ林。彼女は常々「今年は今年」と話してきたが、周囲は彼女を堀内と、そして新チームを昨年度のチームと比較した。それは筆者も例外ではない。 山本綱義コーチも「今年のチームはしんどいというか、苦しいスタートでした。去年はなんとか優勝までいけるだろうくらいの気持ちでしたが、今年は休憩の年だなぁなんて話してしまっていましたから」と、新チーム始動当初を振り返る。それでも、そんな山本コーチを見返すかのようにチームは接戦をくぐり抜け、結果的にインターハイ、U18日清食品トップリーグ、ウインターカップを制覇。その過程で3年生を中心としたチーム力を自分たちのアイデンティティーとし、最後には山本コーチが「去年の3年生に近付いた状況に、今の3年生はある」と言わしめるまでになった。その輪の中心にいたのは、いつだって林だった。 「新チームになってから咲良はすごくチームのことを考えてくれて、堀内さんとは違う咲良なりのポイントガードとしてプレーで私たちにシュートを打たせてくれたり。アシストやボール運びの部分でもチームを作ってくれる必要不可欠な存在です」。#5 橋本芽依は林のプレーが起点となって、今日の京都精華ができあがったことを強調する。 林は常に明るく、ある意味では楽観的で、オフコートでは少し抜けている部分もある。それでも、人懐っこく誰にでも分け隔てなく接する彼女のリーダー像が、今年の京都精華をよりチームらしいチームに仕上げてきたのかもしれない。林自身も「キャプテンを辞めたいと思ったことなどはあんまりなくて、自分はチームをまとめたりコミュニケーションを取るのが好きで、キャプテンになってからは自分が発信していくことでチームに影響を与えられました。なので、つらいこともありましたけど、キャプテンになってすごく良かったなと思います」と笑顔を見せていた。 山本綱義コーチは林についてこう話していた。「去年は堀内が長い時間試合に出ていたので、林は点差が開いたときに使うような起用法をしていましたから、すごく悔しい、あるいは何でチャンスが来ないのだろうと悩んでいたと思います。ところが(2年生までの)悔しい気持ちが新チームになって…キャプテンをさせた次の日から爆発したんじゃないかと思うぐらい良いプレーをしてくれるようになりました。堀内を見ながらじっと我慢できたんだなと思いました」 この言葉に、彼女の1年間が凝縮されているようだった。試合を重ねるたびにキャプテンシーと自信を増し、今では世代屈指の司令塔へと成長を遂げた。今年は今年、そして私は私。京都精華学園の3連覇には、林咲良というキャプテンが必要だった。
文・堀内涼(月刊バスケットボール)