50歳カズは、次節出場で最年長プレーの世界記録更新?!
期待感に胸を躍らせていたからか。川淵氏は出がけに、マシューズに関する詳細を調べたという。1915年2月1日生まれで、フラムFC戦を最後に引退したのが1965年2月6日。つまり50歳5日であり、カズが3月5日のV・ファーレン長崎戦に出場すれば50歳7日で上回る。 世界を見渡せば、ウルグアイ2部のカナディアンズが昨年7月、54歳のMFロベルト・カルモナとプロ契約を結んで話題になった。ただ、カルモナは長くアマチュアリーグでプレーしていて、マシューズや今年でプロ32年目を迎えたカズとは状況が異なる。川淵氏が声を弾ませる。 「次の試合に出たら、別に次じゃなくてもいんだけど、出たら世界記録だ。ギネスに申請できるかな」 カズ自身はシュート1本に終わり、攻撃陣のコンビネーションが未成熟な点を今後への課題にあげた。それでも、チームとして取り組んできた、前線から一体感をもった守備で奮闘。先発メンバーが発表されたときと同様に、ベンチへ下がる時も自軍だけでなく、松本山雅のサポーターからも拍手を浴びた。 「サッカーが好きだ、ということに尽きると思う。子どものころからサッカーしか知らないし、だからこそサッカーには感謝している。失礼のないように常に全力を尽くしたいし、体と情熱が続く限りはやりたい」 川淵氏だけでなく、サッカーという競技を超えた老若男女から寄せられる期待を背負いながら、前人未踏の領域を走り続ける理由を、カズは「好き」という言葉に凝縮させた。一方で、誕生日に合わせて特注してきたコスチュームの値段を問われるとニヤリと笑った。 「4桁(1000万円以上)かな。冗談だよ。その話はいいじゃない」 ストイックな求道者と永遠のサッカー小僧。2つの面影を絶妙のバランスで同居させながら、50歳になったカズは今シーズンも全力で走り続けていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)