「物語でしか語れないことがある」 紫式部が源氏物語に込めた思いは 当時の〝物語〟の立ち位置
強い気持ち・繊細な心情は「和歌」で
たらればさん:当時の人は、強い気持ちや繊細な心情は「和歌」を詠むことで伝えていました。歌うことで自分の「真心」というか、心情を伝えられると信じていて、だから源氏物語も大事なところでは和歌を読み交わしています。 水野:確かに、大事な思いをかわすときって「和歌」で表現されていますね。 たらればさん:はい。「私はあなたをこれだけ思っています」「私は悲しい」「もっとあなたといたい」と、そのまま伝えるよりも、歌に乗せたほうがより伝わる、と当時の人たちは本当に思っていたんですね。 そうなると、「和歌を読まないキャラクターの本音はどうなんだ?」という考え方が生まれます。 源氏物語の主要なキャラクターで和歌をまったく詠んでいない人物がふたりいます。葵の上と弘徽殿の女御です。 読者はそこで「おや?」と思うでしょうし、「このふたりは、どうも何を考えているかよくわからない」とか、「真心が伝わってこない…」といったような人物造形を演出する効果があります。 水野:たしかに和歌で本音を語らないキャラクターの心の裏側が想像したくなりますね…とりあえず自宅にある「あさきゆめみし」を読み返します! ◆これまでのたらればさんの「光る君へ」スペース採録記事は、こちら(https://withnews.jp/articles/keyword/10926)から