街の本屋巡る映画、高松市で上映中…減っていく書店で生まれる交流描く
香川の書店などを舞台にしたロードムービー「本を 綴つづ る」が、高松市の映画館「ソレイユ」で上映されている。小説を書けなくなった作家が各地の書店を巡り、出会いを通じて再起する物語。製作者は「住んでいる地域に個性的ですてきな書店が多くあると知ってもらえたら」と語る。26日まで。(津田啓生)
俳優の矢柴俊博さんが演じる主人公のベストセラー作家・一ノ関哲弘は、あることがきっかけで執筆できなくなった。全国の書店を訪ねて本の書評などを書いて生計を立てる中で、様々な人たちとの出会いを通じて、自身の内面と向き合っていく。
一ノ関は栃木、京都を経て、香川を訪れる。作品では、高松市の宮脇書店本店やブックカフェバー「 半空なかぞら 」「本屋ルヌガンガ」などが店名のまま登場する。このほか、三豊市の父母ヶ浜や観音寺市の高屋神社といった場所も出てくる。
監督は、「花戦さ」(2017年)で日本アカデミー賞優秀監督賞に輝いた篠原哲雄さん(62)。脚本とプロデュースは俳優の千勝 一凜いちか さん(44)が担当した。
きっかけは、2021年に東京都書店商業組合の企画で、2人が書店を紹介するユーチューブ動画の撮影に携わったことだった。昔ながらの街の書店が減っていく状況に触れ、「書店という場所が持つ変わらない価値や店主らの本に対する思いを伝えたい」と、書店を通じた交流をテーマにした映像作品の製作に取り組むようになった。
今回は、東京を舞台にした配信ドラマ「本を贈る」に次ぐ2作目。香川を舞台に選んだ理由について、千勝さんは「個性的な本屋がたくさんあり、本が生活の中に溶け込んでいる。瀬戸内海の景色も開放的で美しく、行き詰まった主人公が再起する舞台にぴったりだと感じた」と話す。
篠原さんは、撮影を振り返り、「自分たちも旅をしながら撮影する中で、地元の人々にはお世話になった。香川の人の温かさが伝わるような作品作りを意識した」と語る。