感受性が豊かで、肉が苦手に ニワトリのおなかに軟らかそうな小さなタマゴがいっぱい 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<3>
《湧き上がった感情が、その後の食生活に影響を与えることになった》
それを見たとき、あのニワトリは僕が殺したんだと錯覚したんです。もし僕がこのニワトリの棚に丸をつけておけば、さばかれることはなかったんだ、と。おなかにこんなにタマゴが入っていたのに、と思った瞬間にかわいそうになって…。それ以来、鶏肉が食べられなくなりました。
豚肉に関しては、通っていた小学校の正門の近くにお肉屋さんがあって、これも小学校低学年のある朝、ブタが50匹くらい、トラックに乗せられて連れてこられてね。背中に番号が書かれたブタたちがブーブー言ってるわけですよ。かわいかったんで、下校が楽しみだったんだけど、いない。で、お肉屋さんに聞いた。「今朝いたあのブタたち、どこにいるの」「おう、ここにいるぞーっ」と。キーンと冷たい空気と生臭いにおいが漂う冷蔵室に、ブタたちが毛をむかれ、内臓も処理されて全部干されていた。ひでぇ、かわいそうだと思って、それで豚肉も食べなくなったんです。そして牛肉や他の肉も。
中国や香港で仕事をするときは大変です。中華料理って、お肉が中心じゃないですか。僕はいつも海鮮専門なんですよ。(聞き手 大野正利)