「トチ、高ク買ウヨ!」と外国人バイヤーが自宅にやってきて……倉本聰が嘆く、インバウンド客が殺到する「富良野」の現在
北海道のほぼ中央に位置する富良野市(人口約2万人)は、国内有数の観光地の1つだ。1981年に放送が開始された名作ドラマ『北の国から』の舞台としても知られ、夏は一面のラベンダー畑、冬はパウダースノーを誇るスキー場などが人気スポット。国内外から多くの観光客が訪れており、2023年度には180万人を超えた。 【マンガ】カナダ人が「日本のトンカツ」を食べて唖然…震えるほど感動して発した一言 今年3月、その富良野に衝撃が走った。1月1日時点での公示地価で、同市のリゾートエリアにある北の峰町の地価が昨年と比べて約28%も上がり、全国1位の上昇率となったと発表されたのである。近年、富良野を訪れる外国人観光客は急激に増えており、別荘などの需要を当てにして、外国資本による不動産投資も活発になっている。 1977年から50年近く富良野に住み続けている『北の国から』シリーズの脚本家・倉本聰氏が、インバウンド客が殺到する現状について胸中を明かした。 ---------- 倉本聰(くらもと・そう)/1935年東京生まれ。脚本家、劇作家、演出家。東京大学文学部を卒業後、ニッポン放送に入社。1963年に退社して独立。代表作に『北の国から』シリーズ、『前略おふくろ様』など ----------
「第2のニセコ」になる
北海道のニセコという小さな田舎町が、いつの間にか外国人観光客に占拠されてしまいました。ラーメンが一杯1600円で売られ、ホテルは一泊20万円を超えているようです。これを「リーズナブルな価格だ」と笑って利用できるのは外国人だけです。もはやニセコは外国の領土といっても過言ではありません。 いまその波が、僕の住んでいる富良野にも押し寄せてきています。このまま放っておいたら、富良野も「第2のニセコ」になってしまうのではないか――そんな危惧がいま、現実のものとなっているのです。 僕が住んでいるのは、北の峰に隣接したエリアです。1976年にこの土地を買ったときは、一坪5000円ほどでした。いまその値段が坪10万円以上に跳ねあがっています。 この辺りの土地を、外国人バイヤーが必死に探しています。先日は、僕の家にまで訪ねてきて、「トチ、売ラナイカ? 高ク買ウヨ!」と言ってきましたよ。もちろん、「ふざけるな」と言って追い返してやりましたが。 ただ、富良野は農村地帯です。跡継ぎ問題や相続税の支払いに苦しむ農家が、広大な土地を手放す気持ちもよくわかります。実際、その土地がどんどん外国人に渡り、別荘やペンションに変わっているわけです。