郷土の偉人、独自に冊子 水不足救った福井文右衛門 三重・松阪の東黒部小
3、4年向けに伊達校長が作る
三重県松阪市垣内田町の市立東黒部小学校(伊達隆校長、35人)は今月、3、4年生が地域学習で使用する教材として、郷土の偉人・福井文右衛門(1596~1650年)の偉業を物語としてまとめた小冊子(A4判、24ページ、カラー)を160部作った。製作を手掛けた伊達校長(59)は「自分たちの地域で、このような立派な人が活躍し、今の生活があることを知ってもらえたら」と話している。
江戸時代の伊勢代官 市が推進の偉人に名前なく 元教員で紙芝居講談の竹守さんが協力
福井文右衛門は江戸時代、名張藤堂家の伊勢代官として、飯野郡出間村(現・松阪市出間町)を治めていた。出間村では草木一本動かすことが禁じられていた伊勢神宮所管の神服織機殿(かんはとりはたどの)神社(大垣内町)を迂回(うかい)して、櫛田川からかんがい用の水路を引いていたため、水量が乏しく、領民は水不足に苦しんでいた。そこで文右衛門は「許可を得た」と偽り、同神社内を通る水路を造り、水田は水不足が解消した。その責任を取って文右衛門は切腹したと伝えられる。この時にできた水路は「福井水路」「文右衛門樋(ぶんえもんどい)」と呼ばれ、現在も利用されている。 伊達校長は、松阪市が推進する「郷土の偉人」の中に地元の福井文右衛門が入っていないことから、「(同校の)子供たちが地域学習をしていく上で冊子があればよいのでは」と考えた。 冊子は同校の学童保育指導員を務める元教員・竹守伸一さん(74)=東黒部町=が文右衛門の講談紙芝居をしていると聞き、協力を依頼。ちょうど画家の足立徹さん(75)=川井町=と共に、子供や高齢者に向けた分かりやすい創作紙芝居「文右衛門樋」を製作中だったため、紙芝居の物語と挿絵を軸に冊子を作成した。 竹守さんは「資料は少ない。紙芝居は口承を基に作りました。用水路が370年間残っていて、今も使われていることをぜひ子供たちに知ってほしい」と話した。 出来上がった冊子と紙芝居は、今月実施される地域学習の授業から早速使われる。