“できないフリ”で家事分担を回避?「無能の武器化」の問題と対処法
同棲や結婚などで二人暮らしを始めると、「家事の分担」という問題に直面しがち。たいていの場合、多くの負担が女性にのしかかることに。 あなたはいくつ当てはまる? ストレスの限界が近い10のサインと対処法を解説 その時に「相手はやり方を知らない・慣れていないから仕方ない」と思ったあなた、本当にそうでしょうか。これは知らないフリでタスクを避けようとする「無能の武器化」かもしれません。 本記事では、欧米で注目を集めている「無能の武器化」についてお届け。 解説:ルーシー・ローウィットさん(家族や恋人関係のアドバイザー)
「無能の武器化」とは?
「無能の武器化(戦略的無能)」とは、2007年に<ウォール・ストリート・ジャーナル>で初めて登場した造語のこと。 「あるタスクのやり方を知らないふり、あるいはあえてできないように見せることで、他の人が能動的に代わってくれるように仕向けることです」 「これにより、タスクを任せる側は状況を巧みに操り責任を回避できる一方で、タスクを受ける側はすべて自分がやらなければならず、相手の無能さに怒りを覚えるというパターンが生じます。こうしたパターンは恋愛や家族の関係だけでなく、友人関係や職場でも見られます」 「無能の武器化」を、「本当はできることや簡単に学べることを、できないフリで避け、責任逃れをすること」だと臨床心理士のチャーリン・ルアン博士も定義しています。
「無能の武器化」が人間関係に与える影響
無能の武器化は、ヘテロセクシャルなカップル(異性愛カップル)の間で特によく見られるもの。 実際にリサーチ会社の「YouGov」が2021年に実施した調査によれば、パートナーがいてフルタイムで働く男女のうち、家事と育児のほとんどを自分が担当していると答えた女性は38%だったのに対し、男性は9%だったそう。 けれど、無能の武器化による最も悩ましい影響は、カップルが不健全なサイクルに陥ることでやがて愛情を感じなくなり、感情的なつながりが失われるかもしれないということ。 「男性があるタスクをできないと思い込む、あるいはできないフリをすると、恋人や夫婦ではなく親子のような関係になってしまうため、結局はそのことが裏目に出る可能性があります」 「ジェンダーに関わらず、子どものように振るまい続けることは自己成長を妨げますし、自信もつきません。“母親役”を求められた女性の中には、パートナーへの情熱や恋愛感情が失われるケースもあります」