米大統領選 クリントン氏に向かい風も?「ベンガジ事件」描いた映画公開
「華氏911」は興行的に大成功したが……
米大統領選挙が行われる年に公開された映画で最も議論を呼んだ作品といえば、マイケル・ムーア監督の「華氏911」ではないでしょうか?2004年大統領選挙では、選挙前の6月に当時のブッシュ大統領を批判するドキュメンタリー映画が公開され、2期目を狙うブッシュ大統領の再選に大きな影響を与えるのではないかとの見方もありました。全米公開前にはカンヌ国際映画祭で最高賞となるパルム・ドールを受賞し、約600万ドルの予算で作られた「華氏911」は北米だけで1億2000万ドル以上の興行収入を記録しました。しかし、映画の人気は大統領選挙の行方を大きく左右することはなく、ブッシュ大統領は再選を果たしています。 ベイ監督の最新作「13時間」では国務長官時代のクリントン氏の描写がないものの、クリントン氏にとっては有権者に思い出してほしくなかったベンガジ問題が劇中で細かく描かれているため、当時の対応をめぐってクリントン氏に対するバッシングが再燃する可能性はあります。しかし、実際の大統領選挙では、有名監督が撮影した映画よりも、連日テレビで流される候補者CMの方がより影響力があり、CMにより過激なキャッチコピーや演出が用いられる傾向が強まっています。ブルームバーグは今月7日、「マイケル・ベイ化する現代の政治広告」というタイトルの記事の中で、過激な演出が増える選挙CMの問題を指摘しています。 ベンガジ問題でクリントン氏の責任を問うテレビCMは昨年10月に市民団体によって作られたものの、今回の大統領選挙ではベンガジ問題を取り上げた対立候補によるネガティブ・キャンペーンは現時点ではまだ行われていません。現地時間15日の映画公開もそうですが、もし選挙CMでベンガジ問題が取り上げられた場合、クリントン陣営にとってはより大きな頭痛のタネとなるのではないでしょうか? (ジャーナリスト・仲野博文)