人々の生活と経済を支える鉄道インフラの役割を見直す記事6選
2:インドネシアの全方位外交とプライドに乗じる習近平 恩恵としての一帯一路とその限界(上)(2023年11月1日)
インドネシアのジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道を、日本主導で建設する動きが進んでいたかに見えた2015年、中国主導案が急浮上し、8月にはジャカルタにて「中国高速鉄道展」が開催された。当時現地を訪れていた筆者も参観したところ、賑わう会場には所狭しと中国高速鉄道の模型が並べられ、中国「国産」技術が07年の開業から僅か数年間で如何に進歩したかを強調していた。 そこで筆者は「遺憾ながら日本案は通らない」と直感した。2010年代に入り、インドネシアが経済成長を続け、急速に台頭した中間層が新しいライフスタイルを手に入れる中、この展示は彼らに「中国との関係を深めればこれだけのものが簡単に手に入る」ことを明快に示したからである。しかも中国は当初、インドネシア政府による債務保証を不要とする態度をとった。また中国案は費用削減のため、ジャカルタ・バンドン双方の起点を中心部から離れた場所とし、新都市開発との相乗効果をアピールした。 インドネシア側には、単に高速鉄道を建設するだけでなく、こうした全体的な安さ・早さ・新しさの印象が魅力と映り、日本案はいくら堅実であっても最終的な訴求力を欠いたことは否めない。
3:「台湾人アイデンティティ」が走らせた新幹線 NHK「路(ルウ)―台湾エクスプレス」は日台俳優陣共演の傑作(2020年6月11日)
NHK「路(ルウ)―台湾エクスプレス」(5月16日スタート全3回)は、台湾新幹線の開業に向けた国際的なコンソーシアムに加わった、日本チームの奮闘を描きながら、「台湾オリジナル」を追及する「台湾人アイデンティティ」を強く感じさせる傑作である。台湾の公共放送局との共同制作となって、台北や高雄などの舞台のロケが素晴らしい。 原作は『悪人』などで知られる、吉田修一の『路』。脚本はヒロインのドラマを描かせては第一人者ともいえる、田渕久美子である。日本チームに加わった商社出身の多田春香役に波瑠を配して、台湾の俳優・歌手のアーロンが演じる、劉人豪(エリック)とのロマンスも絡めて見事な構成になっている。 春香(波瑠)は、池上繁之(大東俊介)から求婚されていた。台湾新幹線が開業するまで待ってくれるように頼んで訪台する。いったんは、婚約指輪を受け取る。しかし、学生時代の台湾旅行で知り合った、エリックのことが忘れられない。別れ際にエリックから連絡先の電話番号を書いた紙を受け取りながら、失くしてしまい再会はかなわなかった。日本チームの拠点オフィスの台湾人女性スタッフがエリックのメールアドレスを探し出してくれて、ふたりは再会する。