<辺野古報道>在沖メディアと在京メディア 違いは?
第3の壁
2010年7月、普天間爆音訴訟の控訴審判決後の会見で島田善次原告団団長は、全国紙の記者らを前に「沖縄の現状を正確に伝えていない」と沖縄県外での報道の在り方を厳しく指弾した。2009年の民主党連立政権で鳩山由紀夫首相(当時)が普天間の県外移設を追求する中、沖縄県外の大手紙などがこぞって「日米同盟の危機」をあおり立てたと指摘した。 鳩山政権での普天間移設をめぐる迷走の中、地元紙の記者らはいかに県外移設を追求するかに力点を置いて取材していた。その一方である全国紙の記者は、米国務省の定例会見で「われわれは皆(日米合意の辺野古移設の)ロードマップがベストだと分かっている。だが日本政府は新しい移設先を検討している……」と既存合意が最適だとの立場を表明し質問した。 在京メディアで日米関係を担当するのは政治部記者で、普天間基地の機能や米軍の運用を分析して移設問題を考える「政策」よりも、民主党政権の「賞味期限」がどうなるかといった「政局」報道に偏りがちな点も影響しているとみられる。 地元紙はこれら在京メディアの姿勢を、官僚の不作為や政治の無策に次いで「第3の壁」と呼んだ。普天間移設問題の早期解決がないと日米同盟が危機に陥るとの論調は当時の全国紙には根強く、「多くの県民の支持と理解を得るよう努力しなければならない」などと辺野古移設を前提に沖縄を説得しなければならないとの論調が目立った。 そこには、「抑止力」とは何か、なぜ海兵隊の拠点が沖縄でなければならないのかという、沖縄の記者がずっと問い続けてきた論点が抜け落ちている。民主党政権で防衛相を務めた森本敏氏は在任中の2012年、普天間の移設先について「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適の地域だ」と述べた。防衛省OBで元内閣官房副長官補の柳沢協二氏も「海兵隊は沖縄で抑止力にならない」と指摘するように、沖縄への基地集中は軍事的理由からではなく、他府県で引き取り手がないという政治的理由からであることを認め始めている。 「沖縄のことは沖縄県民が決める」。沖縄でなくてもいいはずが、辺野古という沖縄に押しつけられようとしている構図が明らかになるにつれ、県民の間には「沖縄だからいいでしょうという沖縄差別だ」という思いが表に出始めている。自分たちのことは自分たちで決めるという自己決定権が強く意識されている。それがゲート前の行動にも結びついている。翁長知事の誕生もその延長線上に位置付けられる。沖縄県外の国民はそこから目を背けることなく、そろそろ直視する時期に来ている。 (琉球新報・編集局 記者 滝本匠)