<辺野古報道>在沖メディアと在京メディア 違いは?
反対の論理
工事に反対するのは「沖縄の民意に反した基地建設」だからだ。住民を巻き込んだ唯一の地上戦である沖縄戦を体験したお年寄りは「二度と人殺しのために、沖縄を使わせない」と座り込みを続ける。那覇市から駆け付ける女性は「沖縄の人々の民意を踏みつぶすようなまねはさせない」との思いで参加している。 普天間飛行場の移設について地元紙の世論調査では、これまで一貫して県民の7~8割が県内移設に反対だ。さらに昨年の普天間移設に関係する名護市長選、名護市議選、沖縄県知事選、衆議院議員選で軒並み、「県内移設反対」を掲げる候補者や政党が圧勝した。 那覇市内から高速道路を使って1時間以上かかる辺野古。現在は直通のバスが毎日運行していて参加者の足となっている。これまでは反対運動の現場に足を運んだ経験がない人や親子連れの姿も目立つ。沖縄県内で基地反対の運動をけん引してきた沖縄平和運動センターの山城博治議長は「今回の運動が従来と違うのは幅広い人が怒りを募らせており、家庭の主婦や親子連れも足を運んでいることだ」と現場の雰囲気を説明する。
メディアの温度差
座り込みに参加する人の多くは全国紙の記者が現れると「もっとこの現状を報道して」と訴える。海上で抗議する市民が海上保安官から荒々しく拘束される様子や、ゲート前で記者が機動隊員から取材妨害を受ける実態を報じている地元紙とは違い、全国では辺野古の現状が十分に伝えられていないことへの不満が募っている。 「節目報道」の側面も強い。昨年末に辺野古移設に反対する翁長雄志知事が当選して以降、初めて海上の作業に着手するという局面には、海上が見渡せる取材拠点には全国キー局のテレビや新聞社のカメラ記者らであふれ、空には撮影用のヘリが舞った。だがその局面が過ぎると翌日からはまた地元メディアだけの風景に戻る。 これら沖縄県外の報道姿勢は今に始まったことではない。2004年8月13日、普天間飛行場のそばにある沖縄国際大学に米海兵隊の大型輸送ヘリCH53Dが墜落した。幸い死者は出なかったが、隣接する公道にまでヘリコプターのローターなどの部品が飛散し、近くのアパートの室内で寝ていた赤ん坊のそばにはコンクリート片が飛び込んだ。 地元紙は号外を出し、翌日の朝刊は1面から2、3、4面、社会面と貫いて関連記事を掲載し、写真特集ページも組んだ。だが県外の新聞は九州版でこそ1面の扱いだったが、東京版は社会面での小さな扱い。当日夜のテレビ報道はアテネ五輪やプロ野球界再編騒動が上位に扱われた。「人が死なないと大きな問題にならないのか」。沖縄県外の報道に県民は大きな失望感と怒りを抱いた。