遺体が3年4カ月も保管され…「老後ひとり難民」が増え続ける日本で起きる異常事態
老後、身寄りのない状態で死を迎えたら、どんな問題が生じるだろうか。部屋の荷物の処理や利用しているサービスの停止は誰が行い、遺骨はどこで保管されるのか――。孤立死を迎えた高齢者にまつわるリアルな諸問題とは。※本稿は、沢村香苗『老後ひとり難民』(幻冬舎新書)より一部抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 「老後ひとり難民」が亡くなると どんな問題が生じるか 「老後ひとり難民」が亡くなる場合に懸念される問題として、多くの人が思いつくのは「孤立死(孤独死)」でしょう。 孤立死とは、誰にも看取られることなくひとりで亡くなり、その死が発見されるまでに時間がかかるケースを指します。 たとえば、ひとり暮らしの高齢者が自宅で亡くなったものの、親族や近所とのつき合いがなかったために、誰にも気づかれずに数日から数週間、場合によってはもっと長い期間にわたって放置されるようなケースです。 遺体が発見されたときには、すでに腐敗が進行していることもあります。このような孤立死は、近年、増加傾向にあります。 もちろん、懸念すべき点は孤立死だけではありません。「老後ひとり難民」が亡くなった場合、死後の手続きを誰が行うのかが問題になります。 体調が悪くなり、病院に運ばれて亡くなれば、発見が遅れて腐敗が進む心配はありません。しかしながら、それでもさまざまな懸念が残ります。 まず考えられるのは、病院や介護施設の費用の精算です。介護施設に入居している場合、入居費が口座引き落としになっているケースであれば問題は生じにくいかもしれませんが、亡くなる直前に病院に搬送されたりすれば、治療や入院にかかった費用の支払いが滞ってしまいます。病院のスタッフは、支払ってくれる人を探すのに苦労するかもしれません。
遺体の引き取りも必要です。病院で亡くなった場合、速やかに安置場所に移さなければなりませんし、そのためには葬儀社に連絡を取って、遺体搬送車を手配する必要があります。誰が葬儀社を選んで連絡するのでしょうか。 ● 遺品整理、公共料金、サブスク 誰が処理するのか責任は曖昧 亡くなったあとの家の片づけもあります。急に倒れてそのまま亡くなるようなケースでは、家に大量の荷物が残されることになるでしょう。その遺品の整理や処分は誰が行うのでしょうか。 さらに、公共料金などの停止手続きも必要です。賃貸住宅や持ち家に住んでいる場合のガスや電気、水道料金や携帯電話料金のほか、昨今では有料の動画配信等のサブスクリプションサービス(サブスク/毎月など定期的に料金を支払うことで、商品やサービスをその都度購入することなく、それらを継続的に利用できる)を使っている人もいるかもしれません。 火葬と埋葬の問題もあります。「自分の骨なんて、そのあたりにまいておいてくれればいい」などという高齢者もいらっしゃるそうですが、火葬を行うには、死亡届を出して、火葬許可証の交付を受ける必要があります。 また、火葬後の遺骨を適当に取り扱うことはできません。 墓地埋葬法では、遺骨は墓地に埋葬するか納骨堂に収蔵するかしなければならないと定められており、過去には「父親の遺骨の処置に困って駅のトイレに遺棄した息子が逮捕された」「妻の遺骨がじゃまになってコインロッカーに遺棄した夫が逮捕された」「遺骨や骨つぼをゴミ置き場に遺棄した石材店経営者が逮捕された」といった事件も起きています。 このように、亡くなったあとには、病院・福祉施設などの費用精算、遺体の確認・引き取り指示、部屋の原状回復、残した家財・遺品の処分、公共料金や生前利用していたサービスの契約解除、火葬・埋葬など、さまざまな手続きが必要となります。 そして、「老後ひとり難民」が亡くなったとき、これらについて誰が責任を持って行うのかは、極めて曖昧なのが実態なのです。 「老後ひとり難民」が亡くなった場合、誰が死亡届を出すのか。亡くなったあとに引き取り手のない遺骨は、「無縁遺骨」と呼ばれます。