トランプ政権の外交政策に変化? さまざまな憶測呼ぶ米国のシリア攻撃
ソ連時代から続くロシアとシリアの蜜月関係
シリアとロシアとの蜜月関係は長く、旧ソ連時代から続いている。中東でのプレゼンスを確立したかったソ連は、兵器の売却を通じてシリアやエジプトとの関係を構築。1957年には当時シリア空軍少佐で、1970年のクーデターを経て大統領に就任するハーフィズ・アサド(現シリア大統領バッシャール・アサドの父)が、ミグ17戦闘機の飛行訓練のためにソ連に10か月ほど滞在していたほどだ。アサド氏のように、多くの軍人や学生が50年代からソ連に留学しており、ロシア人女性と結婚したシリア人エリートも少なくなかったのだという。 バッシャール・アサド氏が大統領に就任するまでの間に、シリアでは1963年と1970年にクーデターが発生しているが、国内の政治事情に関係なく、シリアは冷戦時に外交方針を変えることなくソ連を支援し続けた。アサド家の次男であるバッシャールが大統領に就任してからも、ロシアとは有効な関係を維持しており、2011年3月から始まったシリア内戦では、アサド政権を支援する目的で最大4000人程度のロシア軍部隊がシリアに駐留している。 6日のトマホーク攻撃で標的となったシリア中部のシャイラート空軍基地にもロシア軍関係者が駐留していた可能性が指摘されているが、シリア国内にはロシア軍専用の軍事施設が少なくとも2か所存在する。地中海に面したシリア最大の港湾都市ラタキア近郊にあるフメイミム空軍基地はロシア軍関係者のみによって運用されており、2015年に対IS攻撃の拠点として建設された。ラタキアの南80キロにあるタルトゥスでは、ソ連時代の1971年から補給や修理のために立ち寄れる海軍基地が存在し、今年1月にはシリアとロシアとの間で基地使用の延長に関する契約が成立している。タルトゥスの海軍基地は施設の老朽化などが原因で、補修や改築を早急に行う必要があるものの、工事が完了すれば、最大で11隻の軍用艦が停泊できるのだという。 ロシアの軍事介入が始まってから、シリア国内で命を落とすロシア軍兵士も増え始めている。ロシア軍は空軍兵士らを中心にシリア国内に約4000人駐留させていると欧米の複数のメディアは伝えているが、3月の時点でロシア兵28人の死亡が確認されており、行方不明者も数名存在する。また、正規兵とは別に、ロシアの民間軍事会社からシリアに送られた元エリート兵も少なくない。ロシアやイギリスのメディアの報道によると、これまでに少なくとも80人以上の「ロシア人傭兵」が戦死した模様だ。