オーディション番組『タイプロ』異例の大ヒット、ジャニーズ時代の前例打破で起きた独自現象とは オーディション番組というより、「『timelesz』メンバー3人の〝ドキュメンタリー〟」
発案者は菊池風磨、伝統重んじる〝保守派〟だったのになぜ!?
もちろん、ファン心理としては、60年以上続いた旧事務所の伝統を破る試みが簡単に受け入れられないこともわかる。特に、発案者である菊池は事務所の伝統を重んじる “保守派”と呼ばれていたタレントだったため、ファンの間では驚きやショックも大きかったはずだ。 その保守派だった菊池が、なぜこれまでの立場を転換させてまで前例のない発案をしたのか。『STARTO』所属アイドルのみならずさまざまなボーイズグループに詳しく、これまで数々のオーディション番組も論考してきたライターの池田夏葉氏(@nastuhaikeda)に、その背景を分析してもらった。 「元メンバーの中島健人という、グループのみならず事務所を象徴するような存在が離れたことは、伝統を守る“保守派”から、開拓に挑む“革新派”に踏み切った一つの要因になったと考えられます。 メンバー脱退後に人気が上がっていくグループはそう多くありませんし、まだまだグループとして高い目標を持っている『timelesz』にとって、現状維持より思い切って踏み出すほうが何かしら変化を得られると考えたのではないでしょうか。 一般公募に関しても、『ジュニア』内に歴が長く人気のグループが多いことを踏まえると、そこを抜けて先輩のグループに加入するというのは、仮定だとしても簡単に語られてよい話ではないと思います。『timelesz』の3人もかつて『ジュニア』であった身として、この点への理解は深く、だからこそ、単純に"『ジュニア』から引き抜く"という選択肢はなくなったのではないでしょうか」(池田氏、以下同) ファンからは反発も多かった『タイプロ』だが、配信開始後、番組は次々と話題を振り撒いていく。まず初めに話題になり、早くも番組を象徴するシーンになったのは、8月の#1予告映像で流された「菊池風磨構文」だ。 同映像内での菊池は、歌詞を忘れてしまった候補者に対し、「歌詞忘れてるようじゃ無理か(笑)。歌詞はね、入れとかないと」と笑顔ながらに指摘。すると、これが瞬く間にネットミーム化し、SNSで大拡散。 実際にこの発言が飛び出した場面では、候補者がダンス審査でサイドステップと手拍子を繰り返すのみで、志望動機には「女の子が僕のことを待ってると思ったんで」とよこしまな思いを述べるなど、冷やかしのような態度が物議を醸した。 さらには、かつて『timelesz』メンバーがともに活動した元『ジュニア』の保育士や『Sexy Zone』時代からライブや舞台に通う大ファンで、オーディションにチケット半券の山を持って来た候補者など、話題のシーンが続出。好評は数字にも現れており、あの大ヒットドラマ『地面師たち』を抑え、連日の視聴ランキング首位を獲得する事態となった。