中学時代に「遊びでやってみたら回れた」 高校生がまさか…驚愕ハンドスプリングスロー誕生秘話
選手たちで編み出した戦略…ヒントは青森山田
この徹底したロングスロー戦略を選手たちが考えたキッカケには、高校サッカー界で多くのタイトルを獲得してきた青森山田(青森)が採用していたことも理由にあると話す。そのうえで、「安易に外に蹴りだせないようなプレッシャーを与えられると思う」と、相手チームがセーフティーな選択でタッチラインに蹴り出すプレーに対して影響を与える狙いもあるとした。 この埼玉会場に入ったブロックには強豪校がひしめく。2回戦では2回の優勝経験を持つ名門・静岡学園(静岡)との対戦が決まった。15大会ぶりの初戦突破を果たした高知が挑戦者の立場としてみられるのが自然な下馬評になるだろう。同日の第2試合で静岡学園が広島国際大学(広島)に勝利して対戦が決まる前の時点で、大坪監督は「どちらが勝ち上がっても厳しい試合になると思う。守備も徹底して、選手たちが力を発揮できるようにしたい」と話す。 それでも西森は、ハンドスプリングスローについて2回戦でも「出しますよ」と宣言し「しっかりとした守備をして、自分たちの持ち味であるカウンターやセットプレーを生かしていきたい」と先を見据えた。実際に、この日の戦いでは後半に1点を追う専大北上に押し込まれる時間があったものの、相手が最終ラインからつなごうとしたプレーで不安定さを出した瞬間、一気にプレスを掛けてボールを奪うとショートカウンターで門田の2点目につなげた。一発勝負のトーナメント方式の大会を勝ち上がる手段、戦略として優れた試合運びを見せた。 この舞台に出場するだけでなく優勝を目標に掲げていると話す大坪監督は、高知ユナイテッドのJ3参入も地域のサッカーに大きな勇気を与えているという。実際に西森も含め高知ユナイテッドの中学生年代のチーム出身の選手も多いが、「下部組織の選手だけではなく高知全体のサッカーに盛り上がりがあるし、僕も高知ユナイテッドでプレーしたいという選手も増えている」と話す。 四国からやってきた高知が、初戦突破の勢いに乗って自主性の中から生み出されたセットプレーも武器に伝統校、強豪校に挑んでいく構図が見られそうな2回戦、あるいはその先も楽しみなものになりそうだ。
轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada