野村克也が語る「阿部慎之助と捕手」
日本シリーズを経験し、いいキャッチャーになる
今季は現状、代打専任となる巨人の阿部/写真=大泉謙也
今シーズン、巨人・阿部慎之助がキャッチャーに復帰すると聞き、このページで「遅いよ」とぼやいたのは、昨年末だったか。 案の定、開幕前に左ふくらはぎ痛で戦列離脱。なんとか開幕には間に合ったものの、キャッチャー復帰は叶わず、原辰徳監督にも「左の貴重な代打」「現状ではキャッチャーとして考えていない」と宣言されてしまった。 キャッチャーは、年を取れば取るほど味が出る。私もかつては、キャッチャーとしての阿部の未熟さを、再三指摘してきた。彼はキャッチャー向きの性格ではないのでは、と言ったこともあったと思う。バッティングに関しては、天才的。ゆえに「自分がここに投げられたらイヤだ」という、バッター目線でリードをしているように感じられた。味方ピッチャーの心理や、相手バッターの狙いは、二の次だった。 それが変わってきたのは、日本シリーズを何度か経験してからだ。キャッチャーにとって、一番の成長の場は、日本シリーズ。阿部も一皮、二皮とむけていき、やがて円熟の味を発揮するかと思われた。打者心理を逆手にとったようなリードも見受けられるようになったし、日本シリーズ(2012年)で先発・澤村拓一の頭をマウンドではたいた一件も、私に言わせればキャッチャーとしての責任感の表れであった。 いいキャッチャーになったな、と思ったら・・・
本文:2,009文字
購入後に全文お読みいただけます。
すでに購入済みの方はログインしてください。
週刊ベースボール