山崎賢人主演の映画『陰陽師0』。佐藤嗣麻子監督に聞く作品に込めたこだわりと撮影秘話
平安時代の最強の呪術師・安倍晴明の活躍を描いた夢枕 獏の小説『陰陽師』が実写映画化。本作は、安倍晴明が陰陽師になる前の知られざる学生時代を描く完全オリジナルストーリー。脚本と監督を務めた佐藤嗣麻子さんに、映画の見どころや主演を務める山崎賢人くんをはじめとしたキャストの魅力、呪術シーンのこだわりなど、撮影裏話をたっぷり教えてもらいました!
若き日の安倍晴明と源 博雅が絆を深めていく友情物語を描く
ーー本作は、学生時代の安倍晴明の物語を描く完全オリジナルストーリー。制作の経緯や映画化する上で大切にしたのはどんなことでしょう? 本作の原作小説は、平安時代に活躍した天才陰陽師である安倍晴明を主人公とした夢枕 獏さんの作品。私は19歳の頃から獏さんのファンで、『陰陽師』の大ファン。人間の本質や悲しみが描かれているところが素晴らしく、何より安倍晴明と貴族の源 博雅の関係性がとてもおもしろい。獏さんとも40年くらいの仲で、「いつか陰陽師やってよ」と言われていたこともあり、2016年ごろから脚本に取り掛かりました。とは言っても、『陰陽師』はいろいろな媒体でメディア化されていて、すでにやり尽くされた感がある。そこで、原作にはない陰陽師になる前の学生時代の晴明が博雅と出会い、友情を築くまでを新たに描くことにしました。2人の“バディ感”を最も大切に心掛けたのですが、完成品を見た獏さんも「あの2人が僕の作品につながるんだと思ったら泣けた」と言ってくれてうれしかったですね。 獏さんに脚本を確認いただいた際、「言葉が現代語すぎるのでは?」と気にされていたのですが、幅広い世代の方に見ていただきたく、冒頭に「ここからは現代語で」とナレーションを入れることで快諾いただきました。また本作では、“フェイクニュース”を取り入れていて、人の心を操る催眠術的なものを“呪”と定義しています。“呪”から逃れる方法も作中に示しているのでぜひ探してみてください。 ーー主人公・安倍晴明を演じた山崎賢人くんのキャスティング理由や初めてお会いした時の印象は? また、晴明を演じてもらう上で事前にどんな話をされましたか? 主演の山崎賢人さんは、キャスティングを考えているときにプロデューサーから名前が挙がって。映画『キングダム』シリーズなど、陽のイメージがある方という印象があったので最初は意外だったんです。でも実際にお会いしたら、とても不思議な方で。半分どこかの世界に置いてきたような浮世離れしたオーラがあり、それが人間離れした晴明のようで。原作の晴明も背の高い美青年の設定なので、そういう面でもふさわしいなと思いました。 演じてもらう上で山崎さんとお話ししたのは、晴明はあまり感情を表に出さないけど、無表情ではないということ。内面に何も感じられないようにはしたくないとお願いしました。それから、あまり瞬きをしないでほしいと伝えて練習してもらいました。また、山崎さんと雑談をしていたときに、片眉を上げるしぐさをされていて、それが晴明っぽかったので演技に取り入れたりもしています。 呪術シーンでは、手で印を結ぶしぐさも多いのですが、空き時間も指を柔らかくするためのストレッチをしたり、何度もテイクを重ねたシーンでも文句一つ言わずに挑んでくれて、とてもストイックな方です。晴明の静かな怒りを表現した表情なども本当にステキなので、強くて美しい晴明をぜひ楽しんでください。 ーー都を襲う凶悪な呪いと強大な陰謀に立ち向かう源 博雅役を演じる染谷将太さんや、博雅の従姉妹である徽子女王役の奈緒さん、帝役の板垣李光人くんの魅力とは? 晴明と博雅は“凸凹コンビ”がいいなと思っていて、博雅はコメディーパートもシリアスパートもあるので、両方できる役者さんにお願いしたいなと。それで山崎さんよりは少し背が低く、確かな演技力がある染谷将太さんにお声掛けしました。若い頃の晴明と博雅の友情を描く上で大事にしたのは、 ボケとツッコミのような2人の関係性。その関係性を深く知ってもらうために、撮影に入る前に一度あえて役を交換して演じてもらったんですが、おもしろい芝居をしていて、お互いの立場や呼吸も感じ取ってくれたと思います。お二人自身のほんわかした雰囲気が似ているので、最初から相性も良かったですね。 博雅を慕う徽子女王を演じるのは、奈緒さん。 今作のキャストは実年齢に近い方が多いのですが、奈緒さんは19歳の徽子女王よりも実年齢は少し上。ただ、顔立ちが愛らしく演技も素晴らしいのでぜひとお願いしました。また、 晴明の噂を聞き興味を抱く帝(後の村上天皇)役は板垣李光人さん。帝は10人以上の妻がいたプレイボーイなのですが、 板垣さんの中性的な雰囲気がとても合っていましたね。芝居に対する思いも強く、魅力的に演じてくださいました。