山崎賢人主演の映画『陰陽師0』。佐藤嗣麻子監督に聞く作品に込めたこだわりと撮影秘話
呪術シーンやロケ地、衣装に込めたこだわりの数々
ーー自らを“呪術オタク”と名乗るほど呪術に精通している佐藤監督。呪術シーンを撮る上で特にこだわったことは? また、監督お気に入りの見どころシーンを教えてください。 呪文やお札といった呪術は、呪術監修の加門七海さんと作ったもの。 これまでの陰陽師の作品に出てきた呪術は真言密教をもとにしたものが多いのですが、今回は古文書や道教を参考にしました。ただ実際に昔から言い伝えられている内容でもあるので、万が一のことがないように、フェイクを取り入れています。長い呪文には山崎さんも苦戦していて、何度も練習されていましたね。本来、呪文は感情的に唱えるのではなく、脳の周波数を変え、心の静寂を保った状態で唱えなくてはいけません。山崎さんには特に伝えていなかったのですが、自然と本来の唱え方に似た演技をされていて、さすがだなと感心しました。 作中には呪術のこだわりをたくさん詰め込んでいますが、特にラストシーンの晴明のセリフは、呪術が好きな方には響くセリフになっていると思います。呪術戦の見どころは、 都に襲い掛かる火龍のシーン。晴明が烏帽子を脱ぎ、長髪を振り乱しながら戦うカッコいいシーンになっているので注目してみてください。 ーー晴明の人間離れした動きを表現したアクションも見どころ。アクションシーンの撮影で印象に残っていることはありますか? 今作は人を殺めるアクションではなく、敵から逃れるためのアクションになっています。晴明は“ 狐の子”という伝説がある人物なので、重力を感じさせない、舞うような動きをイメージしました。アクション監督の園村健介さんは、フィギュアスケーターの羽生結弦選手の演技を参考にしたとおっしゃっていましたね。山崎さんはアクション経験も豊富な方なので、 園村さんも信頼して遠慮をせずに動きを作っていて、山崎さんだからこそ実現できた美しいアクションシーンになったと思います。 それから山崎さんは、足がとっても速いんです。逃げるシーンでは誰も追いつけず、走る速度を落としてほしいとお願いするほどでした(笑)。本当に身体能力が高く驚きましたね。 ーー平安時代を再現したロケ地や衣装で、特にこだわった部分や苦労したこと、注目ポイントを教えてください。 平安時代を再現するためのロケ地探しは大変な部分もありましたが、晴明にゆかりがある仁和寺と大覚寺に特別に撮影の許可をいただくことができたのはすごくうれしかったですね。特に仁和寺は、今作にも登場する僧・寛朝が実際にいらしたお寺なので、絶対に撮りたかった場所。国宝の金堂で撮影させていただいたのですが、本物だからこそ持つパワーがあって、映像の重みがまったく違いました。 また衣装は、平安中期という時代を研究して制作しました。現代人が考える平安の衣装は、実は源氏物語絵巻で描かれた平安後期のもの。調べてみると晴明の時代の平安中期は、細くて軽い日本産の絹糸が使われ、衣装にのり付けもされず、さらっと羽織っている感じだったようです。晴明の狩衣は高野山の霊木から作られた生地を採用して、実際に残されている晴明の絵に近いシルエットに仕上げているので、ぜひ衣装も楽しんでいただけたらと思います。 ※山崎賢人の「崎」は、正しくは「たつさき」が正式表記です
室井瞳子