県内７月豪雨３カ月、事業継続へ危機感 酒田、鮭川、戸沢
7月の記録的な大雨で、ふ化場と採捕場が被災した酒田市の日向川鮭漁業生産組合は今年のふ化事業を諦めた。資金不足で、ふ化施設を修復できなかったからだ。来季の事業見通しも立たないという。最上地域でもキノコ栽培業者や旅館業など中小企業を中心に事業再建で苦境に立たされている。25日で発生から3カ月となる。被災地では事業継続に向け危機感を募らせている。 【酒田】施設が水没、修復資金足りず 日向川鮭漁業生産組合（酒田市）は、同市と遊佐町の間を流れる日向川に遡上（そじょう）してくるサケのふ化事業に取り組んでいる。7月の大雨では、川沿いにあるふ化場が屋根まで水没した。受精卵から稚魚になるまで育てる水槽や建物の壁が流され、水槽に井戸水を供給するポンプは壊れ、屋外の水槽には、流されてきた土砂が堆積した。川にサケは戻ってきているが、今季のふ化事業は絶望的となった。 大雨被害に関し、県と市町村の緊急的な支援の助成は必要経費に対し、半額までとなっている。そもそも環境の変化などで、年々遡上数は減少。施設の老朽化もあり、苦しい運営を強いられていた。大場清悦組合長は「復旧には助成を受けても、3千万円近く組合の負担が必要で、現状では難しい」と話す。
ふ化事業は川に帰ってきたサケを捕り、採卵して繁殖させ、稚魚を育て、春先の3月、親のサケが帰ってきた川に放流する。放流した稚魚実績に応じて、県から資金を得られる仕組みで、ふ化事業は成り立っている。同組合はふ化施設が壊滅的な被害を受けたため、こうした事業の継続が難しくなった。被害総額は少なくとも約5800万円だ。 サケを捕獲する金属製わな・ウライは大雨の当時、設置していなかったため無事だった。増水し、濁っていた日向川はいつものきれいな水が流れる姿に戻り、今年も長旅を経たサケたちは帰ってきている。設置したウライにも大きくなったサケたちは入ってきており、採卵はしているが、自前で繁殖はさせられず、他の組合などに卵を供給せざるを得ないのが現状だ。 大場組合長は「大正時代から続けているふ化事業を、これで絶やしたくはない。いつまでもサケが帰ってこられるよう、なんとか続けたい」と語った。 【鮭川】被害2.7億円、菌床全滅も
