県内7月豪雨3カ月、事業継続へ危機感 酒田、鮭川、戸沢
鮭川村ではキノコ栽培が盛んで、村によると、今回の大雨でキノコの生産施設など7カ所が被災した。被害額は2億7317万円に上り、村の担当者は「工場内の菌床がほぼ全滅し、生産を再開できていない事業者もいる」と話す。 中渡の深田農産しめじセンター(深田周一社長)は年間約84万株のブナシメジを生産。今夏の大雨で裏山から泥水が押し寄せ、工場が一部浸水し、泥が堆積した。断水や停電などで約14万株が出荷できなくなったり、成育が悪くなったりした。 ブナシメジの栽培は瓶に詰めた菌床を、気温15度、湿度85%以上に保ち、菌を培養し、成長させる。培養から出荷までは約110日かかる。同社は空調設備と、水を循環させることで冷却し、温度と湿度を管理している。 発災当初、停電や断水などで空調が10日間ほど使用できなくなり、水も循環させられず、工場内は高温になった。菌を植え付けてから1カ月前後のものが大きな影響を受け、出荷できなくなった。この間、新たな菌の培養もできなかったため、11月は収穫が見込めない期間もある。
深田社長(77)はJA、村や県に相談したが、災害の復旧支援は壊れた建物や機械が対象で、農産物の減収に対する支援は受けられなかった。「社員の給与を支払うために自分の収入を切り崩そうと思っている。年齢を考えると、どこまで会社を続けられるか考えなければならない」と苦しい胸の内を語った。 【戸沢】電源や客室、工事に時間 戸沢村古口の温泉旅館「高見屋最上川別邸 紅(べに)」では電源設備や客室、大浴場などが浸水被害を受けた。新たな設備の工事には時間を要し、先行きは見通せない状況だ。 最上川と最上峡の景色が売りで、高見屋旅館(山形市、岡崎博門社長)が経営している。7月の大雨で本館地下にあった電源設備や温泉をくみ上げるポンプ、加温設備などが浸水し、使えなくなった。本館に隣接し、3メートルほど低い場所にある別館の客室5部屋は床上浸水し、泥のかき出しは終えたものの改修が必要だ。 今回被害を受けた機械設備を従来よりも高い場所に設置し、今後、浸水被害を受けない対策をする計画だ。この工事に時間がかかる見通しで、営業再開のめどは立っていないという。
同社は県被災中小企業支援事業費補助金を申請する方針だが、営業休止による損失は対象外だ。岡崎社長は「繁忙期の夏と秋に営業できなかったのが大きな痛手。営業再開に向けて社員一丸となって準備を進める」と話した。