センバツ2022 天理 お守り代わりカード配布 日本一へ「繋」一文字 /奈良
◇人もプレーもつなぎ、結束固く 今チームのスローガンは「繋(つなぐ)」。センバツに向けて新たなスタートを切った天理。野球部では毎年、その年のチームを表す一言を決めている。「繋」の一文字に込めたのは、「チーム全体で個々の力をつなぎ、束になって戦う」との思いだ。固い結束を武器に、目指すは春夏通算4度目の日本一――。【吉川雄飛】 スローガンは2017年、低迷していたチームを奮起させようと、同校で書道を教える大西卓也副部長(58)が「底力」としたためた書を練習場のベンチに掲げたのが始まり。当初は大西副部長がその代にふさわしい漢字を選んでいたが、自主性に任せた方が思い入れも増す、と21年からは選手たちが話し合って決めている。センバツ4強入りを果たしたこの年は「越」。20年の大会中止にもくじけず、黙々と練習に打ち込んだ先輩の背中を見て「あの存在を越えれば、きっと強くなれる」と感じたからだ。 今年の「繋」は、新チーム始動時のミーティングで「勝」「結」など複数の候補の中から選んだ。戸井零士主将(2年)とエース・南澤佑音(ゆうと)投手(同)が提案したという。戸井主将は「今年のチームには、去年の達(孝太投手=日本ハム)さんのような飛び抜けた選手がいない。個々の力ではなく、みんなの力をつないだ全員野球で勝っていきたいという思いを込めた」と打ち明ける。 書は練習場に掲げるだけでなく、カードの形で配られ、選手らはお守りのようにユニホームのポケットにしのばせて試合に臨んでいる。21年秋の近畿地区大会でも、試合前の円陣やピンチの場面でポケットから出し、集中力を高める姿があった。山村侑大(ゆうだい)捕手(2年)は「カードのおかげで気持ちを落ち着かせ、ピンチを切り抜けられた」と振り返る。 さらに、選手たちが意識しているのは、スローガンを声に出すことだ。滋賀学園との延長戦を制した近畿地区大会1回戦、九回裏に2点本塁打を許し、同点に持ち込まれたが、「つないでいこう!」とのベンチからの声で、ラストチャンスをものにした。「ベンチも含めた全員で戦っている実感が湧いた」と原叶大(かなた)選手(2年)。藤森康淳(こうじゅん)選手(同)も「『つないでいくぞ』と口に出すと、不思議と劣勢でも自信が持てた」と語る。 大西副部長は「ちょうどコロナ禍が始まった年に入部してきた彼らは、人と人とのつながりの大切さを思い知った代でもある。彼らによく合った一文字だと思います」。