子どもの近視を抑制できる「外遊び」の一石二鳥、学校での屋外活動を「義務化」した台湾では子どもの近視率が低下
WHOも2019年に、視力に関する最初の報告書を作成し、「最も頻度の高い眼疾患である近視と外遊びの重要性」を指摘しました。これから、その注目度はさらに高まると私は見ています。 ■外遊びは一石二鳥 この「2時間ほどの屋外活動に近視の抑制効果がある」という大発見は、台湾で最も有名な眼科の研究者の一人であるウー・ペイチャンという人が書いた論文で発表されました。 もともと動物実験で、強い光の下で飼った動物のほうが、弱い光で飼った動物に比べて近視になりにくいことが示唆されていました。そこでウー・ペイチャンは、これを学童期の子どもにあてはめてみたわけです。
昔から、日照時間が長い季節のほうが、近視が進まないとされています。近視は夏に進みにくくて、冬に進みやすいのです。このことからも、光の暴露量は重要だと考えられます。 屋外なら、強い光を浴びることができるのはもちろんですが、自然と遠くを見ることにもなり、一石二鳥です。 本来、目の成長期には、近くを見る「近見作業」を避けるのはもちろんですが、原始時代のように一日中外にいて、無限遠――何の障害物もなく少なくとも5m以上先を見るのが理想です。ただ、日本にかぎらず先進国の現代の生活においては非現実的です。その点、1日2時間程度の屋外活動なら、不可能ではないでしょう。
外遊びは、晴れた日にしなくても、曇りの日でも、日陰でもかまいません。 ■屋外にいる時間を確保することが大切 目安としては1000ルクス程度の明るさが推奨されています。1000ルクスというと、だいたい晴れた日の窓際と曇りの日の窓際の中間くらいに相当します。晴れた日の屋外の日なただと10万ルクスありますが、そこまで明るくなくても構わないのです。むしろ、あまりに長時間日なたにいると、紫外線の悪影響や、夏場なら熱中症の心配も出てきます。
日陰くらいの明るさでいいなら、室内の窓際で過ごせばいいのではないかと思うかもしれませんが、それは違います。室内というのは想像以上に暗く、晴れた日の窓際なら2500ルクス程度ありますが、曇りだと800ルクスくらいしかありません。部屋の中のほうだと300ルクス程度しかないこともあります。 では晴れた日に窓際にいればいいかというとそうではありません。自然光が窓ガラスというフィルターにかけられ波長が変わってしまっています。
ですから、あくまで屋外にいる時間を確保することが、近視の予防には非常に大切です。 ただし、外にいてもスマホを見てしまえば、近見作業していることになります。屋外にいる効果が半減してしまう可能性があるので、気をつけてください。 ところで、なぜ強い光の下だと近視になりにくいのでしょうか。実はまだ、分子的なメカニズムは完全にはわかっていません。 動物実験では、強い光を当てると網膜内のドーパミンが増えることがわかっています。おそらく、このドーパミンの作用が重要な役割の一部を演じていると推測されています。
窪田 良 :医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO