総額165億円?ダルビッシュが求めるド軍との再契約はやはり難しいのか
プランケット記者が触れたように、来年30歳になるカーショウを巡る対応もしかり。彼もまた投球数が多く、しかも腰の状態が良くない。ドジャースを中心に取材するブリチャー・リポートのスコット・ミラー記者も、「カーショウが契約破棄を選ぶなら、それはドジャースを出るということではないか」と予想した。 では、ダルビッシュが仮に、5年総額1億ドル程度(訳110億円)まで妥協したらどうかだが、プランケット記者は、「彼がそれをする必要はないし、そもそも相場が下がって、その程度になってしまうかもしれない」と話した。 「プレーオフ最初の2試合の好投により、相場は6、7年で、総額1億2000~5000万ドル程度となり、後はワールドシリーズの結果次第でどこまで跳ね上がるか、という状況だった。やはりビッグゲームでの結果は、契約に直結しうるから。しかしながら、全く逆の展開となった」 ただ、奇しくもそうして価値が下がったのなら、逆に再契約のチャンスが生まれたのではないか、と聞くと、それにも否定的だった。 「ドジャースはワールドシリーズで勝つために、彼をトレードで獲得した。残念ながら、望んだ結果にはならなかった。それがすべてを暗示しているのではないか」 前出のミラー記者も同様だった。 「極端に言えば、第7戦のような試合で、圧倒的なピッチングをすることを期待して、ドジャースは彼を獲った。仮にそうなれば、彼の相場はドジャースの手の届かないところへいってしまう。残念なピッチングをしたことで、例外を認めるような空気にはならないのではないか」 結局、どっちに転んでもドジャースとの再契約はなかったーーそういうことか。 ただ、ダルビッシュ自身の気持ちは定まっている。 「正直な話、メジャーに来てからこう、野球への情熱っていうのがだんだん落ちてきてしまっている部分があって、特にこの3年ぐらいはそれに凄い悩んでいた。で、ここでやっぱり目標を持たせてもらった。(先日の会見で)最後まで負けたくないと言ったと思うんですけど、今、ワールドシリーズに出て活躍したいというのが、目標になりました」 冒頭で明かしたように、出来ればそれはドジャースで、というのが彼の思い。であればまだ、可能性は残されているようにも映るが、果たしてーー。 改めて会見を振り返ると、気になるのはあの6秒間の沈黙。 逡巡しているようにも見えた。どんな思いが頭をかすめたのか。口にした言葉は、社交辞令には聞こえなかった。それなりに重い響きもあった。 いずれにしてもダルビッシュは、人生で初めて、チームを選ぶという選択権を得る。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)