ニュース報道の現場から伝える「気候変動問題」 求められる「提案型ジャーナリズム」
その時、秋田の人々の中で、その状況を「まるで植民地のようだ」と捉え、そこからの脱却を図るために立ち上がる人たちが現れました。地域が主体的に関わる風力発電への挑戦を始めたのです。そして、地元の中小企業で連合を組み、町工場で部品を調達するなどし、地域と共生する風車を次々と建てていったのです。さらに今、秋田では洋上風力の建設も進んでいて、2030年以降には再エネ100%の県になるとされています。 こうした秋田県の洋上風力発電などの取り組みを伝える秋田朝日放送の特別番組「トレタテ! 報道スペシャル 洋上風力の挑戦者たち~秋田発エネルギー革命~」(2023年)の制作に協力しました。その後も、秋田朝日放送との意見交換や情報交流を続けました。
■求められているのは「提案型ジャーナリズム」 今、メディアが気候変動対策を視聴者に伝えるうえで必要なのは「提案型ジャーナリズム」だと考えています。メディアは批判的に物事を捉えます。もちろんそれは重要な役割ですが、人の失敗を取り上げて批判ばかりしていると、新しく何かに挑戦しようとする人たちが萎縮してしまう可能性があります。 地元の人たちが主体となり気候変動対策をしながら地域経済を活性化している――こうした成功事例に光を当て放送することにより、「新しいことに挑戦する社会」の実現に繋げられないかと模索しています。視聴した人がポジティブな気持ちになれるような番組づくりは、テレビ報道だからこそできることの一つではないでしょうか。
私はアナウンサーという職種上、常に視聴者が前向きになれるような言葉を発信したいと、日々心がけています。気候変動対策を少しでもポジティブに捉え「自分も何か小さいことでよいから、できることから取り組み始めよう」と感じてもらえるような伝え方をしたいと思っています。 ある世論調査では、世界全体では6割の人が気候変動対策は生活を豊かにすると捉えているのに対して、日本では逆に6割の人が気候変動対策は負担だと感じているという結果が示されています。だからこそ、気候変動対策に取り組むメリットを具体的に示していく必要があります。