ニュース報道の現場から伝える「気候変動問題」 求められる「提案型ジャーナリズム」
二ュース番組のキャスターや「報道ステーション」のリポーターとしてテレビ報道の最前線に身を置いてきた山口豊アナウンサーは、ある取材をきっかけに、気候変動問題を自分事と捉え、特番の提案やYouTube配信などを積極的に行っている。その取り組みと思いを聞いた。 (本稿は『GALAC』2024年11月号掲載記事に一部加筆したものです) 【この記事の他の画像を見る】 ■気候変動を取材するようになったきっかけ 私が気候変動に対する問題意識を持つようになったきっかけの一つは、2008年に放送されたテレビ朝日開局50周年記念特別番組「地球危機 2008」の取材でグリーンランドに行ったことでした。
現地では温暖化の影響により氷床が溶け、あちこちに巨大な湖や川が現れ、激流は氷床に大きな穴を空けて奥底へと流れ落ちていました。同行した専門家によれば、その流れはおよそ500メートル下の岩盤まで到達し、あたかも潤滑油のように働いて氷河の流れを加速させ、その末端が次々と海に溶け出しているというのです。それは、地球温暖化の現実を思い知らされた瞬間でした。 また、「報道ステーション」を担当していた時代にはスーパー台風による被害の取材などでフィリピンなど太平洋の国々を訪れました。なかでも強烈な経験となったのが、2015年にマーシャル諸島へ行ったときのことでした。
その島では年に一度の大潮の際、海面上昇の影響で島全体が浸水してしまうことがありました。水が引いた後も井戸が海水に浸かったため使えず、島の人々は雨水で生活しなければならないのです。取材を終えて島を離れる際、現地の若者から「私たちの島で起きた災害を、あなたたちはどう感じていますか。私たちがどうすれば良いか、みなさんに考えてほしい」との言葉を投げかけられました。私たち先進国が日常的に排出するCO2が遠い国に暮らす人々の生活を脅かしていることを真に実感した瞬間でした。
■共通点は「こんな大雨、経験したことがなかった」 国内でも毎年のように起きる豪雨災害の現場を取材してきました。2009年には山口県防府市と兵庫県佐用町、2011年に紀伊半島、2014年に広島市、2018年には西日本豪雨、2019年には東日本を襲った台風19号などをリポートしました。 こうした水害の被災地を取材するなかで、私はある共通点に気づかされました。それは、被害に遭われた方々が口を揃えて「こんな大雨、経験したことがなかった」と証言したことです。