迫田さおりさんが胸を打たれた33歳アタッカーの姿、うれしかった東レ時代の先輩の復帰…SVリーグの会場で感じたこと
◆バレーボール女子元日本代表・迫田さおりさんコラム「心の旅」
好きな言葉は「心(こころ)」だという。バレーボール女子元日本代表のアタッカー、迫田さおりさんは華麗なバックアタックを武器に2012年ロンドン五輪で銅メダル獲得に貢献した。現役引退後は解説者などで活躍の場を広げながら、スポーツの魅力を発信しようと自身の思いをつづっている。 ■青空をバックにポーズ 迫田さおりさんと狩野舞子さん【写真】 バレーボールの新リーグ「大同生命SVリーグ」が始まりました。10月末には大阪で女子の大阪マーヴェラス(大阪M、旧JTマーヴェラス)対SAGA久光スプリングスの試合を解説しました。ともにVリーグ時代から何度も優勝経験がある看板カードにもかかわらず、観客席に寂しさを感じてしまいました。 ■素晴らしかった長岡望悠選手のプレー 同じ試合会場では、先に男子の大阪ブルテオン(大阪B、旧パナソニックパンサーズ))とウルフドッグス名古屋の試合がありました。688人と2934人―。当日の女子と男子の入場者数です。大阪Bには、パリ五輪代表の西田有志選手をはじめ注目選手が多くおり、脚光を浴びるのも理解しています。それでも4分の1以下の人数だったのは残念でした。 試合が白熱しただけでなく、今季初出場となったSAGA久光の長岡望悠選手のプレーが特に素晴らしかったからです。連敗中の苦境を打開しようと要所で決定打を繰り出すなど経験を生かした引き出しの多さを見せてくれました。試合は大阪Mの粘りに屈し、セットカウント1―3で敗れました。それでも決意は伝わりました。「リオさん(迫田さんの愛称)、来てくれたんですね」。試合前には、あのふんわりとした口調と笑顔で話をしてくれました。度重なる大けがから復活し、33歳の今もコートに立つ姿に胸を打たれます。 東レアローズ滋賀が登場した滋賀の会場ではうれしいこともありました。一緒にプレーした現役時代、セッターで活躍した「ミチさん」こと中道瞳さんがコーチとして2シーズンぶりに復帰し、同じくセッターの田代佳奈美選手も海外のチームから戻ってきました。東レ時代の私はこの2人にアタッカーとして育ててもらいました。「勝負の世界で必要としてもらえることに感謝して、精いっぱい頑張るからね」。会場で顔を合わせた際のミチさんの言葉です。右も左も分からなかった私に接してくれたように、選手と一緒に悩み、励まし、支えようとしているはずです。 SVリーグの女子は14チームが各44試合を戦い、8位までが来春のプレーオフに進出します。試合数は22試合だったVリーグ時代の昨季から倍増しました。開幕直後の数試合を見た限りではラリーが目立ち、力が接近している印象です。どのチームもまだ完成形ではないようにも映りました。 ■会場を沸かせた「フェイクセット」 今季は2人の外国人選手が同時にコートに立てるようになりました。一方でフルに2人を起用しているチームは少ない気がします。長丁場のシーズンを見据えた試行錯誤の段階なのでしょう。今は「白いキャンバス」の各チームがどんな色のバレーになるのか―。色彩の変化にも目を向けてもらえれば、もっと新リーグを楽しめるはずです。 東レ滋賀は若手アタッカーも躍動しています。19歳の谷島里咲選手が果敢にバックアタックを試み、移籍1年目で22歳の大川愛海選手はスパイクを打つふりをしてトスを上げる「フェイクセット」で会場を沸かせました。1点、1セットを取るための武器は「私はこういうバレーもできます!」とのアピールにもつながります。 秋に船出したSVリーグが冬も熱戦を繰り広げ、誕生1年目から「実りの春」を迎えられるように、私もしっかり伴走応援します。(バレーボール女子元日本代表、スポーツビズ所属) ◇迫田さおり さこだ・さおり、1987年12月18日生まれ。鹿児島市出身。小学3年でバレーボールを始め、鹿児島西高(現明桜館高)から2006年に東レアローズ(現東レアローズ滋賀)入団。10年日本代表入り。跳躍力を生かしたバックアタックを武器に12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪出場。ロンドン五輪では銅メダルを獲得。17年現役引退。身長176セ 【#OTTOバレー情報】
西日本新聞社