動脈硬化とストレッチの関係 体を伸ばすと血管の柔軟性も高まるのか?
――取り組みやすさは重要ですね。 「私たちのチームが行なった研究として、ストレッチ前・ストレッチ中・ストレッチ後の血流量を調べた実験があります。その結果、ストレッチ前とストレッチ中では血流に大きな差は見られませんでしたが、ストレッチ後に血流が増加することがわかりました。血流が増えていたのは、ストレッチした周辺の血管でした。ストレッチを休息なしで行なっても血流が増えるわけではなく、ストレッチ後に少しリラックスしないと血流は増えていかないようです」 ――ストレッチ後が重要なんですね。 「ちなみに、ストレッチを行なうと血管そのものが伸びて柔軟になるのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。これについてはまだ研究では証明できていませんが、血管自体を伸ばすというのも血管拡張物質を出す上で有効な刺激になる可能性はあるかと思います」
――今後、新たな情報が提示される可能性もあるわけですね。 「はい。ただ、動脈硬化は睡眠不足やストレス過多といった日常生活の影響もありますし、大きな要素として食事も挙げられます。食事に関してはバランスも重要ですが、血管拡張物質の一酸化窒素を産生させる材料として『シトルリン』というアミノ酸を含む食材を摂ることも有効です。生活習慣や食事の改善とストレッチなどの運動を組み合わせることが重要だと思います」 (次回は動脈硬化を予防するためのストレッチメニューを紹介します) ◆本記事は日本ストレッチング協会 協会誌「CREATIVE STRETCHING Vol.65」で紹介された内容を再編集したものです。
家光素行(いえみつ・もとゆき) 立命館大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科教授。2003 年、筑波大学大学院医学研究科修了(博士:医学)。2004年、筑波大学大学院 人間総合科学研究科助手国立健康・栄養研究所客員研究員などを経て、2014年より現職。日本体力医学会監事、日本運動生理学会評議員などを務め、心血管疾患、糖尿病、肥満などにおける運動療法と運動効果の機序解明について多くの論文を報告している。