世界で人気の日本の交番(KOBAN)――「おもてなし」とクール・ジャパンの象徴
世界に広がる「KOBANシステム」
現在、交番には「KOBAN」のローマ字が交番名とともに大きく表示されています。それは外国人の観光客や居住者にもわかりやすくするためです。このKOBANは、外国でも「KOBANシステム」として知られる国際語となっています。 このKOBANシステムを海外に伝える上で大きな役割を果たしたのが、デビッド・H. ベイリー氏(ニューヨーク州立大学特別教授)です。氏は“FORCES OF ORDER: Police Behavior in Japan and the United States”(カリフォルニア大学出版局、1976年刊、翻訳書『ニッポンの警察―そのユニークな交番活動』がサイマル出版会より1977年刊)という英文書で、日本に犯罪が少なく治安が良い大きな理由は、都市に交番が設けられ、全国各地に駐在所があり、警察官が地域において住民と良好な関係を築いていることだという研究を発表したのです。ベイリー氏は同書を執筆するため、日本の警察官に数百回にわたるインタビューを行いました。 KOBANシステムは、現在アメリカやラテンアメリカ諸国、およびアジア諸国で導入されています。アメリカではニューヨーク市のマンハッタン、ハワイのワイキキ、サイパンに設置されています。ニューヨークでは、1993年に市長となったルドルフ・ジュリアーノ氏が治安回復のために日本のKOBANシステムを取り入れるなどして、犯罪率削減とニューヨークの浄化に大きな成果をあげました。 ラテンアメリカ諸国では、1997年に深刻な治安問題に直面していたブラジルのサンパウロ州の警察がKOBANシステムに着目、JICA(国際協力機構)と日本の警察庁の支援を受けてKOBANが建設されました。同州のラニエリ地区は「世界一危険な地区」と国連が認定するほど治安の悪いところでしたが、KOBANを導入してから10年後には、殺人の件数は2割程度にまで激減したそうです。そして2008年からは他の州にも広がり、ブラジルの治安改善に顕著な効果を上げています。ホンジュラスでもJICAの協力でKOBANが設置されてから殺人事件が減少しています。2013年には、エルサルバドルにKOBANが設置されました。JICAでは引き続き、グアテマラ、コスタリカなどで支援活動を続けています。 またアジア諸国では、1980年頃にシンガポール政府がKOBANシステムに関心を示し、1983年からNPP(Neighborhood Police Center)という名称の交番を各地に次々と設置しました。NPPは防犯活動を推進し、犯罪の発生率低下という成果を上げています。インドネシアも2004年からKOBANシステムを導入、住民の治安を守っています。カンボジアにもKOBANがあります。 日本は世界でトップクラスの「治安の良い国」として知られ、また街が綺麗で、人が礼儀正しいと言われています。「おもてなし」の国・日本が長い年月をかけて作り上げてきた世界に誇る交番(KOBAN)は、「安心」なコミュニティを形成する、日本独自の「安全」システムとして知られ、各国に輸出されて、世界の治安を守る大きな役割を果たしてきているのです。 (文責・武蔵インターナショナル)