最終的にAIは人類を滅ぼすのか? 人工知能研究者が導き出した「意外な答え」
今後も生き残るのはどんな仕事か?
これは、文章の場合も同じです。 現時点でAIが学習しているのは、主としてインターネット上のテキストデータです。 著作権保護の問題はひとまず棚上げしても、もしもAIがたいていの文章を人間よりも正確に、効率よく書いてくれるようになるのであれば、人間によって作られる文章自体が減っていくことは避けられません。 しかしその結果、当然、品質は下がっていきます。 生成AIに条件を与え、新聞記事のような文章を生成してもらうことはできても、世の中のどこに記事にしたいような取材対象があるのかを探ったり、そこに実際に出向いて人の話を聞いたり状況を調査したりすることは、結局、記者にしかできません。 その記事をベースに文章を書き換えることは技術上できても、そこで生成された記事をさらに学習して……というサイクルにはまり込んでしまうと、事実や知りたい内容からはどんどん離れてしまうでしょう。 あるいは、こうした状況を利用して、意図的に間違った情報や、特定の勢力に有利な情報を紛れ込ませることもやりやすくなってしまいます。
こんな人にはいつの時代も需要がある
私はまず、こうしたAIによる自己再生産の問題には、今後基準の設定も含め、法令面でコントロールしていくことが大切になると考えています。 同時に、この問題が認識されればされるほど、「人の手による価値あるコンテンツ」の重要性が、再び増していくのではないかと思います。 結局、私たちがAIに期待するのは「人が作ったかのような成果物」です。そのためには、人がどんなデータや文章を好むのかを、定期的に検証しなければなりません。 AIがどのように学習しているかについても同じで、人による「品質チェック」は、必ず残るニーズになるでしょう。 言い換えれば、今後も生き残る仕事、あるいはクオリティは、AIに学習される価値のあるもの、と定義できるかもしれません。AIによる学習は伝言ゲームに似ていますが、伝言される内容を作る人には、いつでも需要があることになります。 結局、その価値を作り出せるのは人間しかいません。 そして人間がそれをわかっている以上、AIが人間を滅ぼすことはないはずです。
川村 秀憲(人工知能研究者、北海道大学大学院情報科学研究院教授)