53万人がストライキに参加したアメリカ、労働組合への高い支持率が賃上げラッシュにつながった 背景に”長年の不満”労働者票は選挙結果にも影響【混沌の超大国2024 アメリカ大統領選⑤】
アメリカでストライキが多発し、2023年の参加者数は前年に比べて2・4倍の約53万9000人に達した。全米自動車労働組合(UAW)や全米映画俳優組合、教員組合、医療従事者の大規模ストが参加者数を押し上げた。日本と同様に労働組合の組織率は長年低迷が続くが、アメリカでは労組への期待が高まっている。長年蓄積してきた「ある不満」がストの拡大と賃上げ交渉を後押ししているようだ。(共同通信ワシントン支局 金友久美子) 【写真】テイラー・スウィフトさんは闇の勢力の工作員? 米大統領選、陰謀論が拡散
▽ワシントン有力紙で48年ぶりの大規模スト 「われわれは今日も闘うぞ」。首都ワシントンの通りで2023年9月、中南米からの移民十数人が横断幕や旗を手に、スペイン語で歌ったり、叫んだりしていた。多くが目の前のビルの清掃員。契約期限が迫り、時給の引き上げを訴えているという。 向かいのビルから駆け付けたヘクター・ペレズさんは「契約の内容や形態はそれぞれ違うが声を上げなければ待遇が悪くなるばかりだ。だから今日は帰宅途中に応援に来た」と話す。地元報道によると、世界銀行などの国際機関で働く人を含め、ワシントンと周辺の清掃員らは2~3割の賃上げを勝ち取った。 さらに2023年12月には名門紙ワシントン・ポストの労組が48年ぶりの大規模ストに踏み切った。本社前で「スト中」とのプラカードを掲げる様子を取材に行くと、グラフィック部署の女性に話しかけられた。「会社側は労働者の権利を弱めることばかりに熱心で、交渉にすら誠実に応じていない」と憤る。名門紙と言えど、物価が高いワシントン近郊で暮らすスタッフの生活は苦しい。他の大手メディアとの待遇差や要求項目などが書かれた小さなリーフレットを「同僚にも配って」と、どさっと手渡された。
▽25%の賃金アップに結実 プラカードを手に練り歩く労働者の姿を初めて見たときは驚いたが、いまやアメリカの日常の風景になっている。コーネル大学によると、2023年には全米で466件のストライキが発生した。とりわけ、日本でも頻繁に報道されたUAWやハリウッドなど四つの大規模ストライキでの動員数は目覚ましく、2023年のスト参加者総数の約65%を占めた。 労働者不足や物価高、電気自動車(EV)への移行、人工知能(AI)の脅威…。ストを後押しした要因はさまざまだが、賃上げラッシュには確実につながっているように見える。 ビッグスリーと呼ばれる自動車大手3社を相手取ったUAWのストでは、4年半で25%の賃上げを獲得した。全米映画俳優組合は段階的賃上げや、不利益軽減のための人工知能(AI)規制などが盛り込まれた。米メディアによると、医療大手カイザー・パーマネンテやロサンゼルスの公立学校でのストも今後複数年で2割強賃上げすることで合意した。