連帯って何だろう? 高知市のフェミニズム書店主が語る、ゆるくつながる面白さ
出会った仲間とZINE発刊。つぶやきを共有したい
そうしてスタートを切った同書店。数十冊から始め、いまでは500冊ほどが並ぶ。オープンから約4年を振り返り、中上さんは「いろいろな言葉を分かってもらえる仲間がちょっとずつ増えていきました。(書店オープン前は)『フェミ友』がいない、どこにおるんやろって思ってたんで」と話す。 今年2月には、同書店を通して出会った仲間と友人らの計6人で、ZINE『海南姉妹反逆同盟』を刊行した。夫婦別姓を求める高知県内の運動を取り上げた記事をはじめ、女性県議へのインタビューや、映画をジェンダーの視点で紹介するコーナー、日々を綴ったエッセイなどを盛り込んだ。 中上さんは「発刊によせて」に、こう綴った。 「高知でこれまで顧みられることのなかった言葉、個人の不満だと真剣に扱われずに軽んじられてきた言葉、心の奥底2万マイルに自ら埋めてしまった言葉たちを、どんどこ掘り起こし、解放し、記していきたい。青鞜の昔から変わらないやり方で、このZINEを通し高知の女のつぶやきと主張を共有できたら、と思う。我々は海南姉妹反逆同盟と名乗り、ワルヘバラの花を投げつけ乱闘するかわりに、家父長制はびこるヘルジャパンへ、ZINEを投げつけ抵抗するのだ」
「なんちゃあじゃない」関わりも連帯だと思う
ほかにも、不定期で女性客限定で居酒屋を開店するイベント「スナックおんな」で語らいの場を設けるほか、店内でのトークイベントをこれまで2回開催。 第1回目はエトセトラブックス代表の松尾亜紀子さん、今年2月11日に開いた第2回目は松尾さんとともに作家の津村記久子さんをゲストに迎え、「地方で女性が連帯できる場をつくるということ」をキーワードに据えた。 「連帯って何だろうっていうのは、ここ何年か考えてきたことで。かっこいい響きだけど、はじめは何を指しているのかわからなかった。なぜイベントの副題を『連帯』にしたかというと、自分でも知りたかったからなんです」 その上で、中上さんは「最近は、何気ない関わりも連帯っていえるんじゃないかなと思うようになった」と続ける。 「いろんな連帯のかたちがあって、ひとことで言えるものではないとも最近思います。津村さんのお話も聞いてみて、最近は『ずっとつながらなくてもいいかな』と思うようになりました。例えば私の生活のなかでいうと、子どものお母さん同士とかで気が合わない人がいるとして、関わるのが面倒くさいなって思っていた。でもきっと、同じような経験や苦労をしているかもしれない。そう考えると、挨拶でも雑談でもしておくか、みたいな気持ちになったんです」 「仲間が集う場所やZINEをつくるなど、目にみえるかたちの連帯も大事で、やっていかなければならないとは思う。けれど、何気ないものもある意味で連帯って言えるのではないかと。そういう『なんちゃあじゃない(土佐弁で何でもないという意味)』つながりが、いろんなところにいっぱいあれば女性は息をしやすくなるのではないかと思いました」 ZINEの発行はこれからも続けていく予定だという。 今後やりたいことを問うと、「高知の女性の言葉をどんどん記していきたいという気持ちがありますね。また、最近は部落の女性の声を聞いた本や、インターセクショナリティについての本も出ていて、自分のルーツとして部落があるので一番気になっています。うちの祖父が教科書無償化運動をしていたのですが、やっぱり(メディアなどの記録に)取り上げられているのは男性なんです。だから運動のなかにいたであろう女性のことを、もっと知りたいと思っています」と言葉に力を込めた。 高知の地で、中上さんは今日も書店を開ける。新しい仲間も何気ない関わりも、これからも広がっていくのだろう。そこにはきっと、過去の中上さんのように救われる誰かがいるのではないかと感じた。
インタビュー・テキスト by 今川彩香