【特集】「私たちは、同じ人間なのだから」 原爆の憎しみを乗り越えて伝えるメッセージ
原爆を落としたエノラ・ゲイの乗組員と対面するが…
原爆を落としたアメリカ兵に対して憎しみを募らせた近藤さん。原爆投下から10年後。あるきっかけで思いが大きく変わります。被爆者の救済活動の一環で、アメリカの番組に出演した父親。同行した近藤さんが対面したのは、エノラ・ゲイの副操縦士ロバート・ルイスです。 ■近藤紘子さん 「ずっと思ってた敵をやっつけようと思った1人が目の前にいる!だからそのおじさんをずっと睨みつけていた。」 しかし、目にしたのは、思いもよらぬ姿でした。 ■ロバート・ルイス氏 「神様、私たちはなんてことをしたんだ。そう思い、すぐに飛行日誌に書き込んだ。」 ルイスが口にした言葉に、衝撃を受けます。 ■近藤紘子さん 「それを言ったあと、彼の目から涙がこぼれ落ちるのをしかと見た。私が憎むべきは飛行機に乗っていた人、キャプテン・ルイスではない。私が憎むべきは戦争を起こす人間の心の中の悪。それは今でも、彼に本当に感謝してる。私を変えてくれた。」
苦悩の言葉を口にしたアメリカ兵。あの日、きのこ雲の上で何が起きていたのか…
79年前。エノラ・ゲイの搭乗員は、失敗の許されない任務を果たすため、10か月間にわたる厳しい訓練を積んでいました。失敗した時は命を絶つ…機長のポール・ティベッツは、搭乗員、全員分の青酸カリと拳銃を持ち込んでいました。エノラ・ゲイは、原子爆弾を搭載し、未明に太平洋のテニアン島を飛び立ちます。そして… ■ポール・ティベッツ氏 「爆弾が機体から離れると、私たちは手動操縦を引き継ぎ、爆発と自分たちの距離をできるだけ離そうと、非常に急な旋回をした。爆発が飛行機を直撃したのを感じた後、それが震動波だった。眼下には沸き立つような塵と瓦礫の雲、そしてその上に巨大なキノコがあったからだ。その下には、広島市の廃墟が隠されていた。」 副操縦士のロバート・ルイス。機内に持ち込んだ飛行日誌には「最初の原爆は大成功」「戦争は終わった」と、記していました。
機長のティベッツは戦後、広島の被爆者に語った言葉があります。 ■ポール・ティベッツ氏 「戦争が起こって同じ命令が下ったら、私は同じことをするだろう。だから、戦争は絶対起こしてはいけないんだ。」