日本映画の到達点、アクションシーンは世界に誇れるレベル『キングダム 大将軍の帰還』
2019年から始まった、同名漫画を原作とした実写映画「キングダム」シリーズ。今作の『キングダム 大将軍の帰還』をもって、シリーズ完結となっている。 【写真】『キングダム 大将軍の帰還』場面写真 しかし、これはあくまで第1章が終了といったニュアンスである。 実際にひとつの区切りとなっている作品であるし、何なら今までが長い長いプロローグであったかのようにも思える到達点的作品。 そして圧倒的スケール。海外スタッフが入っていたり、そもそも舞台が中国の物語ということで”日本映画”と混じりっけなしに言えないとはいえ、シリーズ全てを担当してきたアクション監督・下村勇二が手掛けたバトルシーンの迫力は、他国に負けず劣らずで、日本映画全体としても到達点といえるだろう。 重量感を感じさせるバトルシーンの数々は、逆に他国のアクション映画にも見習ってもらいたいと思わせる点が多いにあり、日本映画の底力がそこにはあった。 さて、そんな今作のメインイベントは何かというと、今まで直接的なバトルに参加してこなかった王騎将軍が、ついに身を乗り出してくることだ。 王騎とは、原作の時点で、かなりクセのあるキャラクターではあるが、それを独特な雰囲気で大沢たかおが演じきっている。 大沢といえば、『地下鉄(メトロ)に乗って』(2006)や『風に立つライオン』(2015)など、日本映画界を代表する正統派俳優として知られているが、「キングダム」シリーズの王騎役が、その印象を大きく変え、大沢たかおという俳優に、柔軟性を加えたといえるのではないだろうか。
現在も連載中、どこまで映画化するか
前作『キングダム 運命の炎』(2023)のラストに少し登場しただけだというのに、圧倒的な存在感を残した吉川晃司演じる龐煖と王騎による因縁の対決シーンは、まさに圧巻、日本映画史に残るほどの印象的なシーンとなった。極端なことを言うと、この対決シーンをスクリーンで観るだけでも価値がある作品だろう。 そんなこともあって、作品全体のテンションとしてもMAXになったのだが、ここで発生してくるのが、今作は単行本でいうと、まだ16巻まででしかないということだ。 原作は単行本が72巻まで発売されており、現在も連載中である。つまりどこまで映画化するかの区切りをつける苦境ともいえるかもしれないということになる。 すでに5作目以降の撮影が開始されるという報道が一部でされており、実写版「キングダム」シリーズは今後も継続されていく予定なのだが、クオリティを保ちながら1~2年のペースで公開できた功績もあるだけに、期待がもてる反面、また同じように原作を丁寧になぞっていくのか、あるいは「ゴールデンカムイ」のようにドラマシリーズに移行する手もあるだろうが、正直言って、現時点では先の見えない道。 かと言って、ある程度の力技によるオリジナル展開で完結させると原作ファンからの批判がある。単純に俳優たちが同じキャラクターを演じ続けることにもそろそろ限界があるだろう。 『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)後のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)ではないが、今作の後で実写版「キングダム」シリーズが、どう次の一手に出るかは、今まで以上に重要。 何らかのかたちで突破してくるのであれば、間違いなく日本映画を代表する作品と改めて誇れるものとなるはずだ。 【ストーリー】 秦と趙の全てを懸けた<馬陽の戦い>で、敵将を討った信と仲間たちの前に突如として現れた、その存在が隠されていた趙国の総大将・龐煖。自らを<武神>と名乗る龐煖の圧倒的な力の前に、次々と命を落としていく飛信隊の仲間たち。致命傷を負った信を背負って、飛信隊は決死の脱出劇を試みる。「俺たちで、信を守り抜くんだ――。」一方で戦局を見守っていた王騎は、趙に潜むもう一人の化け物の存在を感じ取っていた。龐煖の背後で静かにそびえる軍師・李牧の正体とは?王騎と龐煖はなぜ馬陽の地に導かれたのか??今、因縁が絡み合う馬陽の地で忘れられない戦いが始まる―。 【クレジット】 出演:山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈、清野菜名、新木優子、吉川晃司、小栗旬、大沢たかおほか 原作:原 泰久「キングダム」(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載) 監督:佐藤信介 脚本:黒岩 勉、原 泰久 音楽:やまだ豊 主題歌:ONE OK ROCK 「Delusion:All」(Fueled By Ramen / Warner Music Japan) (C)原泰久/集英社 (C)2024 映画 「キングダム」製作委員会
バフィー吉川