台湾映画スター、シュー・グァンハンの実像に迫る:日台合作『青春18×2 君へと続く道』に清原果耶とW主演
ひとつの役柄、ふたつの年代を演じ分ける
もの静かで憂いを帯びた36歳と、恋に夢中の18歳。2つの年代を演じ分けたシューの演技は、それ自体が映画の推進力になっている。 監督の藤井は、シューとの初対面から「この人なら18歳と36歳を両方演じられる」と半ば確信していたそうだ。「脚本の執筆中にイメージしていた、静かさのなかに情熱があふれる人物像に重なるところがあったから」 1990年生まれのシューは今年34歳。実年齢に近いため、36歳のジミーは心境的にも近い部分があったという。むしろ18歳を演じるほうが、彼にとっては大きなチャレンジだった。出世作『時をかける愛』もふたつの時代にまたがる物語で、27歳の青年と18歳の高校生の二役を演じていたからだ。 「ビジュアル面を含め、いかに自分の新しい面を見せられるか試行錯誤しました。18歳のジミーは元気があるけれど、どこか優柔不断で不安定なキャラクター。僕自身は彼よりも素直でまっすぐな性格だったので、そこは似ていませんね(笑)」 一人二役とも言える鮮やかな演じ分けを、藤井は「本当にいろんな変化を見せてくれて感動した」と称える。もっともシューいわく、演技のヒントは劇中にあったそうだ。 「上映時間が5時間あったら、36歳になるまでのジミーが何をしていたのかを僕も見てみたかった(笑)。けれど、物語に散りばめられたエピソードや回想から『ジミーはこうやって成長したんだな』という情報をつかむことはできました。どの場面も決して長くはありませんが、とても丁寧に作られています」
「大人の魂が宿った映画」
脚本を読んだとき、シューは自らと36歳のジミーに共通する大きなポイントを発見したという。それは「旅が好きで、旅を通して自分自身を再発見し、旅によって癒されるところ」。このテーマに惹(ひ)かれたことが、本作への出演を引き受けた理由のひとつだった。 「36歳のジミーには、旅に出る勇気、今まで向き合えなかったことに向き合う勇気があります。自分の青春とはどんなものだったのか、そのピースを集めてはパズルのように組み立てながら青春を再び体験し、そして成長していくんです」 シューは「この映画は青春物語、ラブストーリーでありつつ、大人の魂が宿った作品。旅とは何か、過去を振り返ることがどんな機会を与えてくれるのかを教えてくれる」と語る。物語のキーワードである、「旅は何が起こるのかわからないから面白い」という台詞(せりふ)には、「これこそ旅の醍醐味」と強く共感したそうだ。 「旅先では初めての風景を目にし、いろんな人びとや出来事に出会い、さまざまなものを受け取りますよね。大きな影響を受け、考え方が変わることさえある。僕にとって、この映画はまさに旅そのもの。本当に楽しかったし、いろんなことを学ぶことができました」