能登で独自の支援 在宅被災者に食料届け 74歳「自分は感・即・動」/兵庫・丹波篠山市、石川
兵庫県丹波篠山市の岩下八司さん(74)が、能登半島地震で甚大な被害が出た石川県珠洲市や輪島市などに赴き、自宅や施設で暮らす人々に食料品や水を届けたり、炊き出しを行ったりするなどの支援に奔走している。東日本大震災や熊本地震など、災害が起きるたびに「自己完結」で長期の支援を行ってきた。能登の人たちとも親交を深め、支援の拠点として空き店舗を借り受けるなど、独自のつながりで現地の人たちを支えている。
◆在宅被災者に食料品セット
NPO法人「P・U・S」の代表で、バングラデシュに学校を建設するなどの活動を行っている岩下さん。日々の活動を支援してもらっている人のつながりが石川にあり、1月1日の発災後、安否確認などを目的に現地に向かった。食料やガソリン、テントなどの装備を整え、5日に珠洲市に到着。多くの建物が倒壊し、水道などのライフラインが寸断された町で、知人の安否を確認して無事を喜び、仲間から預かった支援物資も届けた。 そのまま能登に滞在し、避難所や福祉施設などに物資を届けた。活動の中で分かってきたのが、かなりの数の人が避難所での生活になじめず、自宅に戻っていることだった。危険度判定で「危険」の紙が貼られた家に戻る人もいた。その多くが高齢者。物流がストップし、スーパーなども閉店している。地割れや陥没が起きている道路は移動も難しい。そんな「在宅被災者」への支援の必要性を感じ、食料品の詰め合わせセットを作って届けて回る活動に移った。 避難所には物資が届いていたが、パンや麺などのインスタント食品が多く、「小麦粉はもう見たくない」という人のために、野菜や果物、肉、納豆、漬物などをセットに。通行量が少ない夜間に金沢市まで出向き、食料を調達しては奥能登に戻る生活を繰り返した。海産物が豊富な土地柄もあってか、特に魚が喜ばれ、「1カ月ぶり」という人もあった。 行政などのニーズ調査が始まる前で、誰が何に困っているのか分からない状況だったが、愛車の軽トラで各地を巡る中で、出会った人々に「何か困っていることないですか?」「食べ物は足りていますか?」などと声をかけては水や食料品などを渡した。受け取った人からは、感謝の声が上がっており、岩下さんは、「食べることは大事。ちょっとでも気分が明るくなるから」と頬を緩ませる。