「ポニーカー」では表現不足 フォード・マスタング 289 誕生60年をルート66で祝福(2) 夢のロードトリップ
「親父がこんなクルマを持っていた」
初代フォード・マスタングで目指す場所は、カリフォルニア州の西端にある小さな町、ニードルズ。日は傾き、クロームメッキを輝かせたトレーラートラックが一列に先を急ぐ。ここは、アメリカ経済の大動脈の1つだ。 【写真】「ポニーカー」では表現不足 フォード・マスタング 289 マッハ1とボス302、ブリット 最新モデルも (123枚) 1度白煙を履いたV型8気筒エンジンをいたわりながら、マスタングを1時間ほど進める。有名な壁画の前で撮影し、ロイズ・モーテル&カフェのネオンサイン点灯に合わせて、再び東のアンボーイへ戻る。 無事にフォトジェニックな1枚を撮り終え、暗闇の中を110kmほどさらに東へ進み、今晩の宿へ。フォトグラファーのマックス・エドレストンが、夜空の美しさに言葉を漏らす。トラックドライバーと並んで、夜を明かした。 キャリコは、20世紀初頭に放棄され、1950年代に復活した銀鉱山の街。西部開拓時代のテーマーパークのような景色を楽しめる。2人で、町の西にあるペギー・スー50’sダイナーで遅めの朝食。ホールスタッフは、ノスタルジックなウェアを着ていた。 英国なまりの英語を突っ込まれるかと思いきや、彼らが関心を示すのはマスタング。ガソリンスタンドでもそうだった。「良いクルマだな」「親父がこんなクルマを持っていたよ」とか、そんな言葉をもらう。60L入るガソリンタンクは、約400kmで空になる。 少し西のバーストーという街は、驚くほど混んでいた。ロサンゼルスやラスベガス、アリゾナなどへ向かう場合、多くの人がここを経由するからだ。
直進時も常にステアリングを細かく操る
ルート66は、南西のビクタービルという街まで、モハベ川に沿って続く。ロサンゼルスとの間には山脈があり、新しい高速道路15号線が、ルート66を部分的に拡幅する形で作られている。 高速域では、マスタングのステアリングの曖昧さがわかる。片側4車線もあるが、1車線の幅は狭い。直進するとしても、常にステアリングホイールを細かく操る必要がある。 小柄なボディはコンバーチブルで、ヘッドレストもない。前後左右の視認性は抜群にイイ。上半身が顕になったスタイルが、デザインされた時代を思い起こさせる。風へ常にさらされる。 1965年にラインオフした289エンジンのマスタングは、現代の長距離クルージングにも対応する。110km/hで、至って快適に走り続けられる。トップギアはロングで、サスペンションはしなやかだ。 遅いトレーラートラックの間を縫うように走るには、ある程度の勇気がいる。しかし、V8らしいドラムロールのようなサウンドへ浸れる。どんな人でも、笑顔にしてしまう体験だと思う。 南西へ進み、カホン峠で再びルート66は高速道路15号線と分岐。少し時間に追われていたわれわれは、もう少し進んでランチョクカモンガの街へ進むことにした。ドライブインでのランチもお目当てだ。