「寝耳に水」「風評心配」、住宅地でのリニア工事になぜ「要対策土」を使うのか 住民困惑、開業は10年以上先・・・説明求める声も
JR東海「住民理解を得ている」と説明、実際は・・・
長野県飯田市のリニア中央新幹線県駅東側の土曽川橋りょう工事で「要対策土」を使うとするJR東海の計画に対し、安全性への懸念や、計画に関する十分な説明を求める声が上がっている。要対策土は土壌汚染対策法の基準値を超える重金属を含む。同社は「住民理解を得ている」とするが、現場周辺や搬入ルートの沿線では、唐突に決定事項を伝えられたと受け止めたり、計画自体をよく知らなかったりする住民は少なくない。現場周辺には住宅や田畑があり、周知のプロセスや方法に問題がなかったか検証する必要がある。 【地図】土曽川橋りょう工事の現場付近
長野県飯田市の土曽川橋りょう工事に使用する計画
JR東海は土曽川橋りょう工事で、流出対策をした上で下伊那郡大鹿村のトンネル工事で出た要対策土約5千立方メートルを活用する方針。今年1、2月に開いた周辺住民対象の説明会で初めて計画を公表した。
「安全です」と説明するばかり、計画自体知らない住民困惑
「いきなり計画を示され、寝耳に水。なぜ住宅地に要対策土を持ってくるのか説明もなく、『安全です』という説明に終始していた感じ」。橋りょう工事の現場近くに住む男性(68)は、説明会に参加した感想をそう語った。同社がリニアの2027年開業断念を表明し、開業は早くても34年以降になる見通しとなったことを踏まえ、男性は「まずは地元の理解をしっかり得てから工事を始めるべきではないか」と訴える。 現場近くに暮らす60代女性は要対策土を使う計画自体を知らず、取材に「本当なんですか」と驚いた様子。「搬入や工事の最中に要対策土のほこりが家に飛散してこないか心配。なぜ住宅地に大量に運び込むのか教えてほしい」と困惑気味に話した。
「至近距離に家がある場合は避ける」マニュアルに選択肢
同社中央新幹線長野工事事務所(飯田市)は取材に対し、計画は国土交通省のマニュアルに沿っており、自社の有識者検討会でも安全性が確認された―とする。ただ、マニュアルでは受け入れ候補地の選定について、できるだけ住宅などが至近距離にある場合は避けることや、無害化するために処分場に搬出する―といった選択肢も示している。 こうした点について、同社は、要対策土の安全性は確認済みで「できるだけリサイクルして活用したい」との説明を繰り返す一方、他の選択肢についてどう検討したのかは明らかにしていない。